apocalypse91
Apocalypse 91... The Enemy Strikes Black / Public Enemy
 Def Jam '91 

80年代末~90年代初頭にかけて、ヒップホップ・シーンのみならず、ブラック・ミュージック界全体、更にロック方面をも巻き込んで絶大な影響力を誇ったパブリック・エネミー。
グループはリーダーでメインMCのチャックD、ハイプマンのフレイヴァー・フレイヴ、DJのターミネイターXの3人を中心に、プロフェッサー・グリフ率いる軍服姿の親衛隊であるS1-Wなどで構成され、その過激で急進的な内容のラップでセンセーションを巻き起こした。

チャックDの演説か説教に聞こえるようなラップや、それを際立たせるフレイヴァー・フレイヴとの絶妙な掛け合いによって、PEの主張は力強く巧みに発信されたが、メッセージをより強力に支えたのは破壊力抜群のサウンドだ。
ハンク・ショックリーとキース・ショックリー、エリック・サドラー、ゲイリーGウィズ、カール・ライダー(=チャックD)からなるプロデュース・チーム、ボム・スクワッドによるプロダクションは、ハードに叩きつける金属的なビート、ノイジーで重層的なサンプリングが特徴的で、そのサウンドはパンクだロックだと言う前にクッソ弩ファンキー。

PEの代表作とされることも多い88年の2nd『It Takes A Nation Of Millions To Hold Us Back』も凄いが、90年代初頭になるとサウンドは更に尖鋭化。90年の3rd『Fear Of A Black Planet』は、反ユダヤ発言で物議を醸したプロフェッサー・グリフのグループ脱退という事件がありながらも、そのエキセントリックなサウンド・プロダクションは益々研ぎ澄まされた。更に、西の大物アイス・キューブとガッツリ組み合ったキューブのソロ1st『AmeriKKKa's Most Wanted』のような超傑作をはじめ、サン・オブ・バザークやヤング・ブラック・ティーンネイジャーズ、シスター・ソウルジャーなどの子飼いのアーティストを続々と送り出すなど、パブリック・エネミーとボム・スクワッド・サウンドは頂点を極めた。

そんなPE全盛期にリリースされた4thアルバムが本作『Apocalypse 91... The Enemy Strikes Black』。しかし、手放しで大絶賛だった前作と比べ、どういうわけか当時の本作に対する世間の評価はややビミョーなものだったように記憶している。
基本的には、前作から大きな変化はないように思う。歌詞は相変わらず過激で辛辣だし、サウンドも文句なく超ファンキー。本作からエリック・サドラーが抜けているが、そんな影響はまったく感じさせない。個人的には本作も前作と同様に気に入って聴きまくっていたし、今聴いても相当カッコいい。

洪水のようなサンプリング・コラージュが尋常でない緊張感でビリビリと鼓膜を震わすオープニング・トラックの「Lost At Birth」、重く打ちつけるドラム・ビートにヤラれる「Rebirth」、剛球ハード・ファンク「Nighttrain」と、アルバム頭っから怒涛の勢いでブッ飛ばす様は圧巻。
スライ「Sing A Simple Song」とラファイエット・アフロ・ロック・バンド「Hihache」のビートを搭載したヘヴィー・ファンク「Can't Truss It」、ラムゼイ・ルイス「Hot Dawgit」のギターをループしたフレイヴァ―・フレイヴのソロ曲「I Don't Wanna Be Called Yo Niga」、ハードなビートをドカスカ叩き込む「How To Kill A Radio Consultant」、ヘヴィーにのたうつ「By The Time I Get To Arizona」、「Move!」はリン・コリンズ「Fly Me To The Moon」のシャウトに煽られるテンション爆アゲ・チューン。

「1 Million Bottlebags」はボブ・ジェイムス「Take Me To The Mardi Gras」、ザップ「More Bounce To The Ounce」、JB「Make It Good To Yourself」などをサンプリング。ファンキーなビートにフレイヴのラップが乗る「More News At 11」、「Shut Em Down」はマッシヴなビートが超強力なヘヴィー・ファンク。
ビズ・マーキー「Make The Music With Your Mouth, Biz」のビートを使った「A Letter To The New York Post」、スライ「Sing A Simple Song」のドラムをループした「Get The Fuck Outta Dodge」、ラストに収められたヘヴィーメタル・バンド、アンスラックスとの共演ヴァージョンとなる「Bring The Noize」は、さすがにブラック・ミュージック耳にはキビシイか。