true to myself
True To Myself / Eric Benet
 Warner Bros. '96 

実姉と組んだデュオとして1992年にデビューするもまったく売れず、96年になってソロとして再デビューを果たしたエリック・ベネイ。デュオでリリースしたアルバムは未聴だが、このソロ1stアルバムとなる本作『True To Myself』は鮮烈だった。

ディアンジェロ『Brown Sugar』を皮切りに、ソロ『Solo』やトニー・リッチ・プロジェクト『Words』、マックスウェル『Urban Hang Suite』がリリースされ盛り上がりを見せた、いわゆる"ニュー・クラシック・ソウル"と呼ばれた一連のムーヴメント。その流れにうまく乗ったカタチでリリースされたのが本作。
アルバムの大半の曲で、ベネイ自身と旧知の間柄であるジョージ・ナッシュJr.、デモンテの3人で作曲/プロデュース/演奏を担っており、プログラミングを排した生々しくライヴなサウンドは、まさにクラシック・ソウルの手触りであり、随所に黒いファンクネスが滲み出しているのも嬉しい。楽曲も粒揃いで素晴らしいが、ベネイのヴォーカルがまた熱くソウルフルで、演奏以上に生々しく鼓膜に張り付いてくる。
ベネイのこの後の作品もいくつか聴いてきたが、やはり本作が断トツの最高傑作だと思う。

アルバムの幕開けを飾るタイトル曲「True To Myself」から、ファンクなグルーヴが駆動する素晴らしい楽曲で、終盤に向けて熱く盛り上がる展開も堪らない。続く「I'll Be There」はメロウな美メロ・ミディアム・バラードで、駆け巡るベネイの歌唱に聴き惚れる。もうこの頭2曲だけで名盤であることを確信。
ファンカーたる矜持を見せつける「If You Want Me To Stay」は、もちろんあのスライの名曲カバー。そしてプロデュースはロジャー・トラウトマン!ロジャーは自分の色で塗り潰すようなことはせず(トークボックスの使い方も控え目)、ベネイもスライ調ヴォーカルで原曲の良さを引き立てる。

「Let's Stay Together(Midnight Mix)」はアル・グリーンのカバーではなくオリジナル曲。"Midnight Mix"と銘打たれているとおり、ベネイの濡れたノドも官能的なミッドナイト・スロウ・ジャムでトロトロにトロける。「Just Friends」は、くぐもったオルガンの音色やリズム・ボックスっぽく響くドラムにスライやスティーヴィーからの影響が窺えるファンク/ソウル・ナンバー。流麗なミディアム・スムーヴの「Femininity」、亡き恋人への想いを歌った「While You Were Here」はベネイの慟哭のような激唱が熱く胸を打つバラッド。コレには圧倒され、しばし言葉を失う。

「Spiritual Thang」はポップでファンキーに弾むミッド・グルーヴ曲。ザックリしたアコギの響きがラフな感触の「Chains」、シタールとタブラっぽい音がインドへと誘う「All In The Game」、シンセ・ベースが生むグルーヴが気持ちよくウネるファンキーな「More Than Just A Girlfriend」、アコギとワウ・ギターだけで進行していくフォーキー・ファンクな佇まいがビル・ウィザーズ的な「What If We Was Cool」、ラストの「Let's Stay Together」のオリジナル・ヴァージョンは、オルガンやハンド・クラップが強調されたゴスペル仕様。