Sho Is Funky Down Here / James Brown
King '71
デビュー以来長らくキング・レコーズに在籍していたJBの、同社からの最後のリリースとなったのが本作『Sho Is Funky Down Here』。
本作のマテリアルの録音自体は1970年2月、オハイオ州シンシナティのスタジオでまとめて録音された模様。実際にアルバムとしてリリースされるのは71年4月なので、1年以上の間が空いていることになる。もちろんその間もJBは精力的にレコーディングやリリースを行っていたワケで、キングへの置き土産として残していった本作は、コレがインスト・アルバムだということもあって、やや手抜き感というか出涸らし感が無くも無い。
この頃はバンドの陣容が大きく変わった時期でもある。ブーツィーら、いわゆるオリジナルJB'sのメンバーの多くが脱退したのが71年の初頭。ポリドールへのレーベル移籍話も重なって、JB周辺は相当ゴタゴタしていたに違いない。事実、予定してた3枚組ライヴ盤『Love Power Peace』は、この混乱の最中うやむやになってお蔵入りしている。
JBの下に残ったフレッド・ウェズリーやジョン "ジャボ" スタークスらに、新加入のフレッド・トーマスやハーロン "チーズ" マーティンらを加えJB'sを再編し、ポリドール第1弾となるアルバム『Hot Pants』の録音が行われるのが71年7月。このバンド再編までの間のリリース・スケジュールを埋めるには、既に録り溜めていた音源を使うより他なかったのだろう。
かと言って、本作は過去の音源を寄せ集めて急造した類の穴埋め作とも言い切れない。先に述べたように、本作のマテリアルは同一セッションでまとめて録音されている。しかも、レギュラーのバンドは使わず、おそらくデイヴ・マシューズがコーディネイトしたのであろう、シンシナティの無名の3ピース・バンドを起用している。
この前年には、ディー・フェリス・トリオを起用したインスト作『Gettin' Down To It』をリリースしていることからして、本作も外部ミュージシャンを使った企画モノとして当初からアルバム・リリースを念頭に録音されたものだと思われる。
キング時代のJBは、ことあるごとにインスト・アルバムをリリースしていたが、本作は他のどのインスト作品とも様子が異なる異色作。これまでのインスト作はソウル・ジャズやジャズ・ファンク的なサウンドだったが、本作はジャズ以上にロックからの影響が色濃いのが特異な点だ。
60年代末は、ジミ・ヘンドリクスやスライ&ザ・ファミリー・ストーンが大きな潮流を生み出し、そこからファンカデリックのような異形のバンドも出てきた。新しいモノは何でも貪欲に取り入れ自分の血肉としてきたJBが、このようなロックを黒人側に取り戻す動きに無関心だったハズがない。
ドラムスとベース、ギターに、JBとマシューズが弾くオルガンを加えた小編成での演奏は、全編にわたって激しくノイジーなファズ・ギターが渦巻くサイケデリック・ブラック・ジャズ・ロックとでも形容できそうなサウンドで、その根底にはブラックネスやファンクネスがグツグツと煮え滾っており、この感触は初期スライやファンカデリックあたりに通ずるものがある。
この試みは本作だけに終わらず、70年にピープルからリリースされた『The Grodeck Whipperjenny』は、マシューズとこの3人がおそらく本作と同時期に録音したもので、まさに本作と地続きのサウンドを聴くことができる(これも、『Gettin' Down To It』に対するディー・フェリス・トリオ『In Heat』のような位置付けの作品と言えるのではないか)。
ちなみに、『James Brown's Funky People(Part 3)』のクリフ・ホワイトのライナーによると、同コンピに収録の「Talkin' Loud And Saying Nothin'(Original Rock Version)」は、本作と同じセッションで録音されたモノとのこと。
アルバム・タイトル曲の「Sho Is Funky Down Here」はファズをかけたオルガンがビリビリ鳴り響くブルーズ・ロック。サイケデリックなファンク・ロック・チューン「Don't Mind」、「Bob Scoward」はファズ・ギターがブリブリと唸り悪臭を放つハードなブギー・ナンバー。
「Just Enough Room For Storage」は稲妻のようなギターが轟くヘヴィー・ファンク・ロック。走るドラムスにフリーキーなオルガンが絡むファンキー・ジャズ・ロック「You Mother You」は、ギターのあのフレーズでメイン・ソース「Just A Friendly Game Of Baseball」を思い出してニンマリ。「Can Mind」はグシャグシャのオルガンとギターが強烈なジャズ・ファンク。
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