connected
Connected / The Family Stand
 Eastwest '98 

ヴァーノン・ジェフリー・スミス、ピーター・ロード、サンドラ・セイント・ヴィクターの3人で結成されたニューヨーク発のユニット、ファミリー・スタンド。
イヴォン・ジェフリーズ&ザ・スタンド名義で1987年にアルバムを1枚出しているようだが、注目を集めるようになったのはファミリー・スタンドに改名した89年のアルバム『Chain』からのシングル「Ghetto Heaven」がヒットしてから。続く91年のアルバム『Moon In Scorpio』では大胆にブラック・ロック路線を打ち出した作品で、当時はこのアルバムを気に入ってよく聴いていた。
しかし、と言うかやはり、この方向性は一般受けせず、グループの活動は停滞。その後、ヴァーノンとピーターはポーラ・アブドゥルのメガヒット・アルバム『Spellbound』やダリル・ホール作品を手がけるなど、プロデューサーとして成功。一方のサンドラは96年にソロ・アルバム『Mack Diva Saves The World』をリリース。それぞれがキャリアを確立し、もはやファミリー・スタンドは解散したのかと思われた。

が、90年代後半になるとプロデュース業が次第に減っていったヴァーノンとピーターは、98年にファミリー・スタンドを復活させる。だが、ソロ活動を開始したばかりのサンドラはここには参加せず、代わりに白羽の矢が立ったのが、かつて92年にキース・スウェットのプロデュースでMCAから1枚だけアルバムをリリースしたことのあるR&Bシンガー、ジャッキー・マッギーだった。
そんなワケで、ヴァーノン、ピーター、ジャッキーの3人体制でリリースされた、ファミリー・スタンド名義では3作目となるアルバムが本作『Connected』。

ニュー・ジャック・スウィングやヒップホップを巧みに取り込んだ『Chain』、ブラック・ロックの『Moon In Scorpio』と来て、本作では前作のロック・テイストをエッセンス程度に残しつつ、よりふくよかで円やかなソウル/ファンク・サウンドになっている。当時のニュー・クラシック・ソウルに歩調を合わせたかにも思えるが、もとより彼ら自体がNCSの源流のひとつと言ってもいいわけで、本作での彼らの振る舞いは自然な流れに思える。
今聴くとやや古臭く感じる『Chain』や、スパイシー過ぎる『Moon In Scorpio』と比べると、今の耳には本作が最もフィットするのは間違いない。ジャッキーのヴォーカルはサンドラの妖艶さにはさすがに敵わないが、その歌唱スタイルもあって、本作は70年代のルーファスを思わせるような作品になっている。

アルバムのオープニング・ナンバー「Keepin' You Satisfied」は円やかで温もりのあるグルーヴのソウル・ナンバー。「Butter」はワウ・ギターやオルガンがウネるミディアム・グルーヴで、抑えたファンクネスが沸々と湧き立つ。「When Heaven Calls」は冒頭からアーニー・アイズレー調のギターが嘶き、終盤には壮麗なストリングスを纏うクラシック・ソウルの趣き。
アルバム・タイトル曲の「Connected」はバリー・ホワイトなストリングスが舞い、やはり生音がウネウネとウネるニュー・ソウルなナンバー。「It Should've Been me(That Loved You)」はピーターが歌うバラードで、メロディーにはスティーヴィー・ワンダーの影が。未聴だが、ゴスペラーズがこの曲をカバーしているらしい。

「What Must I Do Now?」はアコギをジャカジャカ掻き鳴らしながら3人でリードを分け合うロックンソウル。タブラの音が印象的なR&Bミドル「You Don't Have To Worry」、クラヴィネットやギターがヘヴィーにリズムを刻むブラック・ロック「Fienin」、ピーターとジャッキーが歌うロック・バラードの「You're Mine」、タブラ入りでインド風の旋律と音のロック・ナンバー「Don't Ask Why」と、アルバム後半はややロック寄りの楽曲が目立つが、前作のような激しさはなく、落ち着いた趣き。
「More And More」は音のウネりがエロい官能スロウ。ラストの「What Must I Do Now?(Reprise)」は先のヴァージョンよりハードさが減じ更に円やかさが増したアコースティック・ソウル。