before the dawn
Before The Dawn / Patrice Rushen
 Prestige ’75 

1974年にアルバム『Prelusion』でデビューした若き女性ジャズ・ピアニスト、パトリース・ラッシェン。
そのデビュー作を含め、70年代にプレスティッジからアルバムを3枚リリースした後は、R&Bフィールドへのクロス・オーバーを睨んでエレクトラへと移籍。ジャズの枠に留まらない、自身の可憐なヴォーカルを前面に押し出したポップなダンス/ファンク作品は、90年代以降のヒップホップ/R&Bでも数多くサンプリングされた。ダンス・クラシックの「Forget Me Nots」や、ヒップホップ・ソウルの礎となったメアリー・J・ブライジ「You Remind Me」ネタのメロウ・グルーヴ「Remind Me」などは、特に人気が高かった。

自分も、その2曲が入った『Straight From The Heart』なんかは90年代には愛聴していたけど、しかし、今はそれら80年代のパトリース作品を聴くことは滅多になくなってしまった。むしろ、70年代のプレスティッジ作品の方が、現在では聴く機会が多いかも。
本作『Before The Dawn』は75年の2ndアルバム。新進気鋭のジャズ・ピアニストとしてデビューしたパトリースだが、早くもこの2ndアルバムではアコースティック・ピアノはほとんど弾いておらず、専らエレクトリック・ピアノやシンセサイザーを駆使したジャズ・ファンクをプレイ。これが70年代半ばの作品ということを考えると、おそらく『Head Hunters』以降のハービー・ハンコックの電化ファンク路線を意識していたのだろう。全曲パトリースの自作でアレンジも自ら手掛けているということからも、女性版ハンコックとして売り出していこうという意図が読み取れるように思える。
プロデュースはチャールズ・ミムズとレジー・アンドリュース、演奏陣はレオン "ンドゥグ" チャンスラー、ハーヴィー・メイソン、リー・リトナー、ヒューバート・ローズ、ジョージ・ボハノンなど一流どころが集結。若いパトリースを盛り立てる。

アルバムの幕開けを飾る「Kickin' Back」は、重いドラムスとベースのグルーヴを軸にパトリースの弾くシンセやらクラヴィネットやらが絡みつく、まさに『Head Hunters』以降のハービー・ハンコックのスタイルを踏襲したかのようなジャズ・ファンク・チューン。
「That's The Story」はヴォーカル入りの都会的でダンサブルなジャズ・ファンク・ナンバーで、後のクロス・オーバー路線の萌芽をここに見出すことも出来そうだが、ここではまだパトリースは自分で歌っていない。
「Jubilation」はヒューバート・ローズのフルートがヒップに囀るブラジリアン・ジャズ・グルーヴで、パトリースはアコースティック・ピアノでその腕前を見せつける。アルバム・タイトル曲「Before The Dawn」は、まさに夜明け前の澄んだ静けさを感じさせるジャズ/フュージョン・ナンバー。ラストの「Razzia」では再びスリリングなジャズ・ファンクを展開。