in the glamorous life
In The Glamorous Life / Sheila E.
 Warner Bros. '84 

父がサンタナやアステカのパーカッション奏者として活躍したピート・エスコヴェード、伯父がコーク・エスコヴェードという音楽一家に生まれ、自身も10代の頃から西海岸を中心にパーカッショニストとして活動したシーラ・エスコヴェード a.k.a. シーラE。
70年代には父との連名でアルバムを2枚リリースしたものの、キャリア初期はセッション・ミュージシャンとして裏方の仕事が活動の中心だった。そんな彼女にとって大きな転機となったのは、言うまでもなくプリンスとの出会いだ。

2人が初めて出会ったのは78年のことだったようだが、彼女がプリンスと活動を共にするようになるのは、その5年後の83年から。以来、アーティスト・ネームをシーラEと改め、プリンスの勧めに従ってソロ・アーティストとしてのキャリアを歩む。一方で、ソロ活動と並行してプリンスのレコーディングやツアーに主にドラマー/パーカッショニストとして参加。また、リーヴァイ・シーサーJrやミコ・ウィーヴァー、ボニー・ボイヤーらもシーラが連れてきたミュージシャンだった。
シーラがプリンスのバンドで活動したのは88年のアルバム『Lovesexy』とそのツアーまでだが、80年代後半のプリンス黄金期をミュージシャンとして、そしてソウル・メイトとしても支えた最重要人物のひとりであることは間違いない。

そんなシーラEのソロ・アーティストとしての代表作は、この1stアルバム『In The Glamorous Life』以外には考えられないだろう。まさに彼女の代名詞と言っていい大ヒット曲「The Glamorous Life」をフィーチャーしたアルバムだ。
本作のリリースは84年6月4日、アルバム『Purple Rain』のリリースが6月25日、そこからのシングル「When Doves Cry」は6月2日から7月7日まで、5週にわたって全米シングル・チャート1位に君臨。そして映画『Purple Rain』の7月下旬からの公開を控えている状況。全米中でプリンス・フィーヴァーがグググッと盛り上がらんとする絶好のタイミングで本作はリリースされたのではないかと想像する。

当時のプリンスとシーラの勢いがギュッと詰まった作品に本作はなっており、全6曲で35分にも満たない尺の短さも、勢いそのままの録って出し感を強く印象付ける。クレジット上では全曲シーラ作となっているが、Prince Vaultによると、シーラの自作は1曲のみ(これもプリンスとシーラの共作)で、残りはすべてプリンス作。もちろん演奏も管と弦、そしてパーカッションを除いてほとんどがプリンスによるものとのこと。
アルバムの印象としては、ミネアポリス流儀のダンス・ナンバーが主体で、プリンス自身のアルバムやタイムの作品と比べると、よりポップさやキャッチーさが増している。また、シーラ自身が演奏するパーカッションも本作の大きな特徴になっており、当時のファンカラティーナにも通じる色合いも他のプリンス作品との違いとなって表れている。

アルバムのオープナー「The Belle Of St. Mark」はポップなダンス・ナンバーで、キャッチーなメロディーとアレンジが楽しげな雰囲気を醸し出す。「Shortberry Strawcake」は身悶えるように猥雑に蠢くギターがカッコいいハード・エッジなファンク・チューンで、いかにもこの頃のプリンスらしいつくりだが、リズムを装飾するパーカッションがほのかにラテンのスパイスをふりかける。
「Noon Rendezvous」は「The Beautiful One's」系の幻想的なトラックが美しいバラード。しかし、個人的にはこの曲の良さについ最近まで気付けないでいた。『Originals』でプリンス・ヴァージョンを聴くまでは。美しも儚く官能的なプリンス版と比較してはさすがに分が悪いが、このシーラ版は彼女の丁寧な歌唱により曲の良さが素直に表現されていて、これも素晴らしい。

「Oliver's House」はポップでキュート、かつファンキーな曲で、ここでもシーラの打楽器がいいアクセントになっている。「Next Time Wipe The Lipstick Off Your Collar」は壮麗な弦アレンジをあしらった、迷宮感覚の不思議なバラード曲。
そして、アルバムの最後に登場するのは「The Glamorous Life」。都会的なムードを醸すラリー・ウィリアムズのサックスが咽び泣き、打ち込みのビートに切り込むように打ち鳴らされるティンバレスやラテン・パーカッションがスピーディーに疾走するダンス・トラックで、やはりこれは文句なしの名曲。

正直に告白すると、本作をこれまでほとんど評価してこなかった。『Originals』の「Noon Rendezvous」きっかけで、改めてかなり久々に本作を聴いて、「The Glamorous Life」以外にもイイ曲ばっかりじゃないかと、今更ながら気付かされた次第だ。ちゃんとマトモに聴いていなかったのだなぁと反省。80年代の他の2枚のアルバムもしっかり聴き直そう。