wide open
Wide Open / General Kane
 Motown '87 

ウォー人脈の後ろ盾を得て77年にアルバムをリリースしたブーティー・ピープルを前身とする、LAの超重量級ファンク・バンド、ジェネラル・ケイン。
バンドを主導するリーダーでベーシストのミッチ・マクドウェルは、Pファンクからの影響をストレートに露わしつつ、濃密なブラックネス溢れるヘヴィー・ファンクを創造。80年代に入って求心力の低下したクリントンから離反したフレッド・ウェズリー、メイシオ・パーカー、ドーン・シルヴァなどを引き入れ、レイ・デイヴィスを準主役級にフィーチャーした82年の3rdアルバム『Girls』あたりがこのバンドの頂点だろう。

83年の『Dangerous』をもってタブーを離れた後は暫くアルバム・リリースが遠のくが、バンドはその間にモータウンと契約。マクドウェルにとっても憧れであったろうモータウン入りを喜んだに違いないが、Caineがコカインを連想させるとかいう理由で、レーベル側の要請でGeneral Kaneへのバンド名の変更を余儀なくされる。
モータウン傘下のゴーディーからのリリースとなった86年の移籍第1弾『In Full Chill』は、ジャケットに写るバンド・メンバーのいかにも80'sな出で立ち、またバック・ヴォーカル担当の女性メンバーも加わるなど、それまでの男臭くタフなイメージの刷新を図った。変化はヴィジュアル面だけに留まらず、生ドラムを排しビートは全曲打ち込み、エレクトリックなファンク・サウンドは同時期のキャメオを意識してないワケはないだろうが、『Word Up!』のような大成功を収めることはできなかった。

本作『Wide Open』は、翌87年の6thアルバム。
本作も全編にわたってドラムはプログラミングだが、衝撃なのはベースのクレジットが無いことだ。つまりはシンセ・ベースで代用しているということだろうが、本来ベーシストであるマクドウェルが、とうとうここではベースを弾かないという決断をした。
ファンク・バンド受難の80年代後半、いち早くバンドの軽量・スリム化に成功したキャメオや、「I Want To Be Your Man」のようなバラードにヒットの活路を見出したザップ/ロジャーといった稀有な例を除き、ほとんどの大型ファンク・バンドが歴史の闇に消えていいたこの頃。本作のジャケットでマクドウェルが一人で写っているのも、大所帯ファンク・バンドの古臭いイメージを敬遠したのかもしれないし、ボトムのエレクトリック化は時代との折り合いをつけるための苦渋の選択だったのだろう。

しかしこのアルバム、上記のような勝手に想像するネガティヴなイメージとは裏腹に、打ち込みだろうがシンベだろうがお構いなしとばかりにエレクトリックなヘヴィー・ファンクを叩きつける痛快作だ。基本的には前作の延長線上にあるのだが、前作にはやや感じられたようにも思えた迷いのようなものは本作には無く、開き直ったかのようにひたすら重いファンク・ビートを打ちつける。前作も力作だったとは思うが、ヘヴィーであることを身上とするマクドウェルのファンク魂が半ばヤケッぱちに全開となった本作の方が個人的には好み。
しかし、ニュー・ジャック・スウィングやヒップホップが台頭しはじめたこの時代に、この武骨なファンク・アルバムは顧みられることはなかったようで、この後マクドウェルは音楽業界から足を洗い、結果的に本作がジェネラル・ケイン最後のアルバムとなってしまった。

アルバムのオープニング・ナンバー「Girl Pulled The Dog」は、ビシバシと打ちつけるエレクトリック・ビートに、Pファンク・マナーのアレンジやヴォーカル・ワークで聴かせるファンク・チューン。パーラメント「Flashlight」のカバーはソリッドなビートを突き刺すヘヴィー・ファンクで、さすがにオリジナルには及ばないが、歴史的大ファンク・クラシックを臆することなく真正面から捉えた好カバーと言える。
「Woppity Wop」は80年代のクリントン作品に通じる作りの、ハードでゴツいデジタル・ファンク・チューン。アイディア豊かなアレンジ・センスはプリンスを思わせたりも。ファンカデリックの名曲を思わせるタイトルの「Love Knee Deep」は、まさに膝までズブズブの超強力なヘヴィー・ミッド・ファンク。「Close Your Eyes」はマクドウェルと女性ヴォーカルのデュエットによるシットリと濡れたスロウ・ジャム。ジェネラル・ケインのバラード曲では『Girls』収録の「For Lovers Only」がサイコーだが、この曲もイイ。

「House Party」はレイ・デイヴィス風の低音ヴォイスの導入部からPマナー横溢の、ハードなドラム・ビートにファンキーなチキン・スクラッチ・ギターを刻みつける、非常にカッコいいゴリゴリのエレクトロ・ファンク。「The Grown Up」はシンプルでラフなビートにラップを乗っける、オールド・スクールなノリのミッド・ファンク。
アルバム・タイトル曲の「Wide Open」はゴツゴツしたビートのエレクトリック・ファンクで、同時代のザップ/ロジャーっぽい雰囲気もある。ラストの「Friction」はソリッドなエレクトロ・ファンクで、ラリー・ブラックモン風のマクドウェルのヴォーカルに例のレイ・デイヴィス調ベース・ヴォイス、女性コーラスも絡めて展開。この曲で聴かれる硬い金属音のような音は、バーニー・ウォーレル「Ain't She Sweet」やファミリー・スタンド「Plantation Radio」にも似た音が入っているが、この曲をサンプリングしたものだろうか。