live mix part 2
The Live Mix Part 2 / Breakestra
 Stones Throw '00 

ロサンゼルスを拠点に活動するファンク・バンド、ブレイケストラ。
彼らの最大の特徴は、その名前の由来にもなったのだろう、ブレイクビーツを生バンドでノンストップで演奏するスタイル。当初カセットテープで出回った『The Live Mix Part 1』はファンク・ファンにアピールする以上にヒップホップ界隈で評判を呼んだようで、後に彼らに目を付けたストーンズ・スロウからCDもリリースされた。

本作『The Live Mix Part 2』は彼らの2ndアルバムで、自分は本作でこのバンドのことを知った。
基本的にはパート1を踏襲する内容で(重複している曲もある)、様々なファンク/ソウル/ジャズなどの名曲を短い尺でノンストップで繋いで演奏、その原曲の多くはヒップホップのアーティストによって何度もサンプリングされているもので、まるでネタもののミックス・テープを聴いているかのような錯覚に陥る。

重要なのは、曲のチョイスやパーツの抜き出し方に、ヒップホップ的な感覚が色濃く出ているように感じられることだろう。そのためか、原曲となるファンクやソウルのクラシック・ナンバーをカバーしていると言うよりも、それをネタ使いしたヒップホップ楽曲のカバーのようにも聴こえる部分があるというところが興味深い。
彼らにとっては70年代のファンクと同等か或いはそれ以上に、80年代末~90年代前半のヒップホップが大きな影響源であることが分かる。

もちろん、原曲やそれをサンプリングした曲について何も知らなくても、これは十分楽しめるし素晴らしくカッコいいファンク・アルバムだと思うが、その辺りのことも踏まえて聴くとより楽しめることは請け合いだし、本作からネタ元のファンクやヒップホップへと分け入っていくのも面白いだろう。
自分も本作が出た2000年当時は、ここでネタにされているヒップホップ・ナンバーの多くは90年代にリアルタイムで通過していたが、原曲の方はまだ知らないものが多かった(今でも知らない曲は結構あるが)。

以下、各曲のレヴューは前述のような視点で、原曲とあわせてそれをサンプリングした代表的な楽曲(或いブレイケストラがカバーするにあたって意識したであろう曲。もしくは自分の好きな曲)についての情報を中心に書いた。
手持ちのCDにはアーティスト・サイドの意向により曲目のクレジットが無いのだが、Discogsにはしっかりデータが挙がっているので、曲タイトルはそちらを参照(普通にググっても曲目の一覧が出てくるが、そちらには一部誤った情報がある)。
サンプリング等の情報はWho Sampled をフル活用して書いた。大変便利なサイトでいつも重宝しているが、これとて完全ではない。あとは記憶力に頼るしかないが、コレ何だっけ?と思い出せないものや、気付けていない引用元もまだまだ有るように思える。


まず、アルバムの冒頭は「Eight Bar Segment Intro」と題された、各曲20秒程度の短いインタールド的な曲が(8曲ではなく)9曲続く。もちろんノンストップ。

M-1 Eight Bar Segment Intro 1
初っ端はユージン・マクダニエルズ「Jagger The Dagger」のレイジーなギターのフレーズを演奏。この曲のこのギターのサンプリングで最も印象的なのは、ア・トライブ・コールド・クエスト『People's Instinctive Travels And The Paths Of Rhythm』の曲間で数度に渡って登場するジェロビのインタールドだが、楽曲単位で言えばオーガナイズド・コンフュージョン「Black Sunday」になるか。

headless heroes
Headless Heroes Of The Apocalypse / Eugene McDaniels
「Jagger The Dagger」収録
 

stress
Stress(The Extinction Agenda) / Organized Konfusion
「Black Sunday」収録




M-2 Eight Bar Segment Intro 2
これはクインシー・ジョーンズ「Summer In The City」の冒頭のオルガン。サンプリング例は多数あるが、個人的にはこの原曲以上にファーサイド「Passin' Me By」を思い出してしまう。

bad girl
You've Got It Bad Girl / Quincy Jones
「Summer In The City」収録


bizarre ride
Bizarre Ride Ⅱ The Pharcyde / The Pharcyde
「Passin' Me By」収録



M-3 Eight Bar Segment Intro 3
このグルーヴィーにトグロ巻くようなゴリゴリのベース・ラインとキーボードは、9thクリエイションの「Bubble Gum」。コレをループしたアーティファクツ「Wrong Side Of Da Tracks」には、原曲の埃っぽくタフなグルーヴが濃縮注入されている。他には、「Bubble Gum」に加えて同じアルバムから「Rule Of Mind」とのW使いのサード・ベース「Derelicts Of Dialect」も好き。

bubble gum
Bubble Gum / The 9th Creation
「Bubble Gum」収録


artifacts
Between A Rock And A Hard Place / Artifacts
「Wrong Side Of Da Tracks」収録



M-4 Eight Bar Segment Intro 4
これはビリー・コブハム「Crosswind」のファンキーなギター・リフとステディなドラム。これも原曲よりも、ギャングスター「Here Today, Gone Tomorrow」の方が馴染み深い。個人的にこの曲の印象が強いためか、他に目立った使用例は思いつかない(というか知らない)。

crosswinds
Crosswinds / Billy Cobham
「Crosswind」収録


step in the arena
Step In The Arena / Gang Starr
「Here Today, Gone Tomorrow」収録



M-5 Eight Bar Segment Intro 5
ミーターズ「Just Kissed My Baby」のワシャグシャと掻き毟られる弩ファンキーなワウ・ギター。コレは原曲のインパクトが強過ぎるためか、サンプリングした曲は数多いものの個人的に強く印象に残る使用例があまり思い浮かばないのだが、強いて言えばパブリック・エネミーの「Timebomb」か。

rejuvenation
Rejuvenation / The Meters
「Just Kissed My Baby」収録


yo bum rush the show
Yo! Bum Rush The Show / Public Enemy
「Timebomb」収録



M-6 Eight Bar Segment Intro 6
これはジョニー・テイラー「Watermelon Man」という渋いチョイス。もちろんこのギター・リフはメイン・ソース「Snake Eyes」。やはりこの曲のインパクトが大き過ぎる故か、他にはほとんどサンプリングされていないようだ。
ところで、ググって出てくる誤情報とはこの曲のことで、タイトルが「Eight Bar Segment Intro(Getting Nasty)」となっている。愛用のウォークマンに取り込むと、やはりタイトルが「Getting Nasty」となっているし、Who Sampledでもブレイケストラの「Getting Nasty」という曲が存在していて(但し音源無し)、アイク・ターナー&ザ・キングス・オブ・リズム「Getting Nasty」をサンプリング、となっている。コレはメイン・ソース「Snake Eyes」の冒頭部分でアイク・ターナーの「Getting Nasty」のあのピアノの部分をサンプリングしていることから来る誤りと思われる。「Getting Nasty」のあの印象的なピアノのフレーズは、ブレイケストラのこの曲では登場してこない。

wanted one
Wanted One Soul Singer / Johnnie Taylor
「Watermelon Man」収録


breking atoms
Breaking Atoms / Main Source
「Snake Eyes」収録



M-7 Eight Bar Segment Intro 7
ガルト・マクダーモットの「Space」という曲。非黒人音楽のこの辺りまではさすがにフォローできていないのだが、この非常に印象に残る音は聴き馴染みがある。バスタ・ライムス「Woo-Hah!! Got You All In Check」での使用例がよく知られているが、Who Sampledには無い有名なサンプリング例が他にアリそうな気もするが思い出せない。

woman is sweeter
Woman Is Sweeter / Galt MacDermot
「Space」収録


coming
The Coming / Busta Rhymes
「Woo-Hah!! Got You All In Check」収録



M-8 Eight Bar Segment Intro 8
JB's「(It's Not The Express)It's The J.B.'s Monaurail」のファンキーなプハプハ・ホーン!これを使った曲はいくつかあるようだが、もうこれは個人的にはEPMD「Let The Funk Flow」一択で。

hustle with speed
Hustle With Speed / The J.B.'s
「(It's Not The Express)It's The J.B.'s Monaurail」収録


strictly business
Strictly Business / EPMD
「Let The Funk Flow」収録



M-9 Eight Bar Segment Intro 9
アヴェレージ・ホワイト・バンド「T.L.C.」のドラムスとベースのグルーヴィーなリフとホーンを見事にファンキーに演奏。これは意外と使用例が少ないようで、Who Sampledで調べてブギ・ダウン・プロダクションズ「Ya Know The Rules」だったとようやく思い出した。

show your hand
Show Your Hand / The Average White Band
「T.L.C.」収録


edutainment
Edutainment / Boogie Down Productions
「Ya Know The Rules」収録



次の10曲目以降はDiscogsでも曲タイトルがちゃんと付いており、また演奏時間もやや長め(といっても多くは2~3分程度)。

M-10 Funky Drummer
出ました、大ネタ中の大ネタ、史上最も数多くサンプリングされた曲のひとつ、JB「Funky Drummer」。ドラム・ブレイク、ホーン・リフ、JBのヴォーカル部分など、使えない箇所がほとんどない、鯨肉のような素材。そりゃこんな気持ちのいいグルーヴ、ファンク・バンドやってたら演奏したくなるってモンだろう。サンプリング例は枚挙に暇がないが、敢えて1曲だけ挙げるとすればパブリック・エネミー「Fight The Power」か。

in the jungle groove
In The Jungle Groove / James Brown
「Funky Drummer」収録


fear of a black planet
Fear Of A Black Planet / Public Enemy
「Fight The Power」収録



M-11 Crumbs Off The Table
この曲のオリジナルはデトロイトのヴォーカル・グループ、グラス・ハウスだが、ここで参照しているのはローラ・リーによるカバーの方。ブレイケストラもここでは女性シンガーをフィーチャー。この曲はサンプリング例が少ないようで、自分に馴染みのあるところではアイス・キューブ「It's A Man's World」があるが、今回Who Sampledで調べるまでそれとは気付けなかった。

laura lee
Two Sides Of Laura Lee / Laura Lee
「Crumbs Off The Table」収録


amerikkkas most wanted
Amerikkka's Most Wanted / Ice Cube
「It's A Man's World」収録



M-12 Sister Sanctified
原曲はスタンリー・タレンタインで、この辺りも個人的にはあまり馴染みがない(ウェルドン・アーヴィンによるカバーの方が馴染み深い)。サンプリング使用例は多く、ブギ・ダウン・プロダクションズ「My Philosophy」が最も知られているところだろうか。

cherry
Cherry / Stanley Turrentine
「Sister Sanctified」収録


by all means necessary
By All Means Necessary / Boogie Down Productions
「My Philosophy」収録



M-13 Hook N' Sling
エディー・ボーによる原曲「The Hook And Sling」は、ジェイムス・ブラックによる強力ドラム・ブレイクとギター・リフが最高に泥臭くファンキー。サンプリング例は数多いが、どうやら声ネタとしての使用例が多いようで、あのドラムをサンプリングした曲は意外に少ない(ビートが独特過ぎて使いづらいのか?)。自分に馴染みのあるところではキャンプ・ロー「B-Side To Hollywood」とか。

hook and sling
The Hook And Sling / Eddie Bo & The Soul Blenders
「The Hook And Sling」収録


up town saturday night
Uptown Saturday Night / Camp Lo
「B-Side To Hollywood」収録



M-14 Sing A Simple Song
スライの曲の中では最もサンプリングされている曲だろう。グレッグ・エリコのドコスカと叩き込むドラム・ブレイクやフレディーのギター・リフ、ブリッジ部分のホーンなど、ブレイクとリフだらけで構成された怪物級ファンク。ドクター・ドレー「Deep Cover」やパブリック・エネミー「Can't Truss It」、ジャングル・ブラザーズ「J.Beez Comin' Through」などヒップホップはもちろん、R&B系でのサンプリングも多く、シェロの「All Night Long」やアートゥン・ソウル「Dog N' Me」などが印象的。

stand
Stand! / Sly & The Family Stone
「Sing A Simple Song」収録


home girl
The Homegirl / Shello
「All Night Long」収録



M-15 Sexy Coffee Pot
まず、この曲の冒頭部分のアーシーなドラムとホーンはマンドリルの「Mango Meat」。これはもうジャングル・ブラザーズ「Straight Out The Jungle」一択だろう。

just outside of town
Just Outside Of Town / Mandrill
「Mango Meat」収録


straight out the jungle
Straight Out The Jungle / Jungle Brothers
「Straight Out The Jungle」収録



「Mango Meat」の後に演奏されるのがトニー・アルヴォン&ザ・ベルエアーズの「Sexy Coffee Pot」。暴走するドラムスとササくれたギター、陽気なホーンが弩ファンキー。これをサンプリングしたエリックB&ラキム「Run For Cover」もクールでド渋でカッコよし。サイプレス・ヒル「Real Estate」も好き。

funk drops
Funk Drops / V.A.
「Sexy Coffee Pot / Tony Alvon & The Belairs」収録


let the rhythm hitem
Let The Rhythm Hit 'Em / Eric B. & Rakim
「Run For Cover」収録



更に曲の途中でビル・ドゲット「Honky Tonk」の弾け飛ぶビートが乱入。その瞬間、ビートナッツ「Are You Ready」!と思わず声を上げてしまいそうになる。

honky tonk popcorn
Honky Tonk Popcorn / Bill Doggett
「Honky Tonk」収録


beatnuts
The Beatnuts
「Are You Ready」収録



M-16 I Got Love
原曲はチャールズ・ライト&ワッツ103rdストリート・リズム・バンドだが、この曲のサンプリング例はWho Sampledで調べてもパブリック・エネミー「See Something, Say Something」1曲しか出てこない(但しコレは2007年の曲なのでブレイケストラより後)。ワッツだったら同じアルバムに入っている「Express Yourself」が大クラシックだし使用例も数多いのだが、そっちではなく敢えてこの曲を演るというのは、先の「Crumbs Off The Table」同様にブレイケストラの面々の原曲に対する思い入れが余程強いのだろうと思う。気だるいヴォーカルもチャールズっぽい。曲の途中ではスライ「You Can Make It If You Try」のブレイクも挿入。

express yourself
Express Yourself / Charles Wright & The Watts 103rd Street Rhythm Band
「I Got Love」収録



M-17 Baby Don't Cry
サード・ギターの定番声ネタ&ドラム・ブレイク。しかし、使用例はメイン・ソース「Looking At Front Door」とDJシャドウ「The Number Song」ぐらいしか無いようだ(Who Sampled調べ)。なのにこれほど強烈に印象に残っているということは、よっぽどこの2曲、と言うか「Looking At Front Door」のインパクトが大きかったということなのだろう。
この曲のアタマの1分半ほどジャキジャキと掻き鳴らさられるギター・カッティングとグルーヴィーにウネるドラムス&ベースは、明らかに原曲よりも強力で何か足されていると思うのだが、何か思い出せない(ギターはJB「Escape-Ism」っぽいような気がするのだが)。

third guitar
The Third Guitar
「Baby Don't Cry」収録


breking atoms
Breaking Atoms / Main Source
「Looking At Front Door」収録



M-18 Inner City Blues
原曲はもちろんマーヴィン・ゲイのあの名曲だが、ここでブレイケストラが参照しているのは、原曲よりもテンポが速くオルガンが入ったリューベン・ウィルソンによるカバー・ヴァージョンの方であることは明らか。いや、と言うよりもコレはATCQ「Youthful Expression」へのオマージュと言うべきか。こういう、敢えてリューベン版をカバーするあたりにヒップホップ的なセンスを感じる。

sweet life
The Sweet Life / Rueben Wilson
「Inner City Blues」収録


peoples instinctive
People's Instinctive Travels And The Paths Of Rhythm / A Tribe Called Quest
「Youthful Expression」収録



M-19 Cramp Your Style
まず、この曲の冒頭部分に登場するブバブバブ~という低く唸るホーンは、マーヴァ・ホイットニーの「Unwind Yourself」だ。この部分を延々ループしたのがヒップホップ・クラシック、45キング「The 900 Number」。

its my thing
It's My Thing / Marva Whitney
「Unwind Yourself」収録


45 kingdom
45 Kingdom / The 45 King
「The 900 Number」収録



その後にマイアミのバンド、オール・ザ・ピープル「Cramp Your Style」のカバーが続く。このバンドには先のサード・ギターの中心メンバーであったスヌーピー・ディーンも在籍。サンプリング例はブギ・ダウン・プロダクションズ「I'm Still #1」やサイプレス・ヒル「Real Estate」などの有名どころの他、LLクールJが「Milky Cereal」「Mr. Good Bar」と同一アルバムで使い回し。

miami sound
Miami Sound / V.A.
「Cramp Your Style / All The People」収録


mama said knock you out
Mama Said Knock You Out / L.L. Cool J
「Milky Cereal」収録



M-20 Champ
またまた大ネタド定番、モホークスの「The Champ」。あのユルくもファンキーなオルガン・リフが聴こえてきただけで、もう無条件にその曲を好きになってしまうぐらい、好き。これもヒップホップのみに限らず使いまくられ、最も知られたところだとガイ「Groove Me」だろうが、他にパッと思いつくだけでも、ジャマイカ・ボーイズ「Shake It Up!」、トレイ・リュード「Hoodlums Who Ride」、テイシャーン「Love Is Forever」など多岐に渡る。

champ
The Champ / The Mohawks
「The Champ」収録


drop the line
Drop The Line / Trey Lewd
「Hoodlums Who Ride」収録



M-21 Hot Pants, I'm Comin'
大ネタ連投、ボビー・バード「Hot Pants - I'm Coming, I'm Coming, I'm Coming」。JB自身もフル・フォース・プロデュースの「Static」で再利用しているが、ここでブレイケストラの念頭にあるのはビッグ・ダディ・ケイン「Raw」。この「Raw」という曲では、「Hot Pants - I'm Coming, I'm Coming, I'm Coming」の他にリン・コリンズ「Mama Feelgood」の痙攣するようなホーンをサンプリングしているが、ブレイケストラも途中で「Mama Feelgood」のホーンをブッ込んでくる。
ちなみに「Raw」はシングル・オンリーだが(ベスト盤には収録)、『Long Live The Kane』の「Raw(Remix)」と『Prince Of Darkness』の「Raw '91」でもこの2曲のサンプルは使われている(前者では「Mama Feelgood」は断片のみになっているが)

bobby byrd got soul
Bobby Byrd Got Soul  The Best Of Bobby Byrd
「Hot Pants - I'm Coming, I'm Coming, I'm Coming」収録



black caesar
Black Caesar / James Brown
「Mama Feelgood / Lyn Collins」収録


bdk
The Very Of Big Daddy Kane
「Raw」収録



M-22 Sad Chicken
原曲のリロイ&ザ・ドライヴァーズ「The Sad Chiken」は、これもサンプリングではほとんど使われたことがない模様。この曲もサンプリング云々ではなく、タフで埃っぽく煙たいディープ・ファンクの原曲のカッコよさを、ブレイケストラの演奏が伝えてくれている。

cold heat
Cold Heat / V.A.

「The Sad Chicken / Leroy & The Drivers」収録



M-23 Remember Who You Are
後期(末期?)スライの中では何故か人気の高いこの曲「Remember Who You Are」。かつてワックス・ポエティックスのスライ特集で、カット・ケミストがスライのフェイヴァリット5曲の中にこの曲を選んでいた。その人気の高さの大きな要因のひとつにATCQ「After Hours」の存在があるだろう(他にはサンプリング例はほとんど無い)。
それにしても、ブレイケストラの連中はATCQの1stアルバムに余程影響を受けたのだと思われる。本作には他にジャロビのインタールド部分や「Youthful Expression」があるし、『Live Mix Part 1』には「Luck Of Lucien」(ネタのビリー・ブルックス「40 Days」)もあった。

back on the right track
Back On The Right Track / Sly & The Family Stone
「Remember Who You Are」収録


peoples instinctive
People's Instinctive Travels And The Paths Of Rhythm / A Tribe Called Quest
「After Hours」収録



M-24 Humpty Dump
このオリジナルはエディー・ボーが手掛けたニューオリンズの女性ヴォーカル・グループ、ヴァイブレッツが唯一リリースしたシングル「Humpty Dump」。これもジェイムス・ブラックの黒く煙たい弩ファンクなドラムとエッジの効いたギターがカッコいい。キャッチーな女性コーラスもオリジナルに倣って再現。サンプリングも多いが、あのドラムを使ったものとなれば、ピート・ロック「Back On Da Block」か。

eddie bo
Eddie Bo's Funky Funky New Orleans / V.A.
「Humpty Dump / The Vibrettes」収録


underground classics
Underground Classics / Pete Rock
「Back On Da Block」収録



M-25 Burning Spear
原曲はもちろんレア・グルーヴ名曲にしてフルート・ファンク・クラシックのS.O.U.L.「Burning Spear」。これも先にやったモンのインパクトが強過ぎて、それ以降はあまり使われなかった曲で、先駆者はフルートとベースをスモーキーに燻したピート・ロック&CLスムース「Go With The Flow」。これと、「Burning Spearの」フルートは使わずベース・ラインのみと、同じアルバムから「Soul」のドラムとフルートを持ってきたオーガナイズド・コンフュージョン「Releasing Hypnotical Gases」が双璧。

what is it
What Is It / S.O.U.L.
「Burning Spear」収録


all souled out
All Souled Out / Pete Rock & C.L. Smooth
「Go With The Flow」収録



M-26 Showbiz  Interlude 
これはショウビズ&AG「Silence Of The Lambs(Remix)」の冒頭部分のオルガンのフレーズで、サンプリング元はチャールズ・カイナードによるビートルズ「Something」のカバー。ユルユルのオルガンが何とも気持ちよくグルーヴィーで、ブレイケストラはショウビズが使わなかったいかにもあの「Something」なフレーズまでキッチリ演奏。しかし、なぜこの曲だけサンプリング元の曲名をタイトルに付けなかったのだろうか?

wa tu wa zui
Wa-Tu-Wa-Zui(Beautiful People) / Charles Kynard
「Something」収録


runaway slave
Runaway Alave / Showbiz & A.G.

「Silence Of The Lambs(Remix)」収録



M-27 Soul Power '74
本編最後もまたド定番、メイシオ&ザ・マックスの「Soul Power '74」。だが、ブレイケストラは('74ではなく)「Soul Power」のJBのヴォーカル部分もここでは歌っている。やはり彼らもJBから受けた影響は非常に大きく、ファンクからソウル、ジャズまでいろんな曲をカバーしているブレイケストラだが、その演奏やグルーヴ自体は JB直系と言えるものだろう。ここでは最後は「Sex Machine」風にシメる。この曲も、サンプリングの素材としてではなく、原曲自体の魅力をブレイケストラなりに調理。
一応、サンプリング例としては個人的に好きなレッドマン「Rated 'R'」を挙げておく。

us
Us / Maceo
「Soul Power ’74」収録


whut see album
Whut? See Album / Redman
「Rated 'R'」収録



と、ここまではノンストップですべて繋がって演奏されている。
続く2曲は繋がっておらず、独立している。

M-28 Getcho Soul Togehtha Part 1
M-29 Getcho Soul Togehtha Part 2
ブレイケストラのオリジナル曲で、先にシングルでもリリースされた曲。
オリジナル曲でありながら、どこから聴いても既聴感たっぷり。おそらく60年代末~70年代のファンクからの引用を巧みに組み合わせて(或いはソレっぽく聴こえるように)構成されているのだと思うが、全体としてはやはりJB的なファンク・サウンドで、これもカッコいい。