now
Now / Ed Townsend
 Curtom '75 

エド・タウンゼントは50年代末頃から自身のシングルをリリースしているようだが、彼がソウル・ミュージックの歴史にしっかりとその名を刻むことができたのは、シンガーとしてではなく作曲家/プロデューサーとしての功績があってこそだろう。
なかでも特筆すべきは、やはりマーヴィン・ゲイの73年作『Let's Get It On』のA面4曲。「Let's Get It On」や「Please Don't Stay(Once You Go Away)」、「If I Should Die Tonight」といった超名曲はすべてエドとマーヴィンの共作、プロデュースだ。
また、個人的にはこの時期のエドの仕事として外せないのが、インプレッションズ70年代中期の傑作群『Finally Got Myself Together』『First Impressions』『Loving Power』。特に『First Impressons』ではメイン・プロデューサーとして制作を指揮し、またほとんどの曲を書いている。

その『First Impressions』とおそらくほぼ同時期に制作されたと思われるのが、エド・タウンゼント自身のアルバム『Now』。リーダー作としては3作目にあたるようだが、どうやらコレ以降はソロ・アルバムは出していない模様(79年には自分の息子たちと4人組グループ、タウンゼント・タウンゼント・タウンゼント&ロジャーズを結成しアルバムを1枚リリースしている。なお、息子のデイヴィッドは後にサンライズを結成、アイズレー・ブラザーズのプロデュースのもとアルバム『Sunrize』をリリースした他、「Shower Me With Your Love」の大ヒットで知られる3人組ヴォーカル・グループ、サーフィスのメンバーでもある。またもう1人の息子のマイクはジェシー・グリーン『Come With Me』収録の「Move On Up A Little Closer」の作曲者のひとりとしてもクレジットされている)。

本作はもちろん全曲エドの作曲/プロデュース。アレンジはエド自身と、彼の右腕として『Let's Get It On』やインプレッションズ諸作のアレンジを担ったレネ・ホールが共同で務めている。演奏陣は、リッチ・テューフォ、フィル・アップチャーチ、ラッキー・スコット、クイントン・ジョセフといった、当時のカートム・スタジオが誇る精鋭ミュージシャンたち。
というワケで、必然的に本作は70年代中期のシカゴ・ソウル、カートム・サウンドに満たされている。カーティスの『Give, Get, Take And Have』やインプレッションズのアルバムなど、あの辺りの音を好む向きであれば、間違いなく楽しめる作品。エドのヴォーカルは渋いオヤジ声で、お世辞にも上手いとは言えないが、それを補って余りある曲の良さと音の気持ちよさ。

アルバム冒頭の「If You Can't Take Me Higher」はグルーヴィーに揺れるメロウ・ソウル・ナンバー。ファンキーなミドル・チューン「Maybe I'll Bump」、ムーディーなメロウ・スロウ「I'm With You」、「How Could You Do It」もメロメロにメロウでトロけそうなシカゴ・ソウル。
「Where Did Those Signs Go」は軽やかにハネるシカゴ・ステッパーで、コレは気持ちイイことこの上ない名曲。重厚な雰囲気を醸すバラードの「The Moving Fingers Writes」と「Got A New Lease(On Life)」、ラストの「This Too Shall Pass」はピアノやストリングスが流麗に舞うウィンディ・ソウル。