in pursuit of the 13th note
In Pursuit Of The 13th Note / Galliano
 Talkin Loud '91 

ロンドンで行っていたクラブ・イベント"Talkin' Loud And Sayin' Somethin'"が評判を呼んでいたDJ、ジャイルズ・ピーターソンが、レア・グルーヴの提唱者であるノーマン・ジェイとともに設立したレーベル、トーキン・ラウド。90年代前半にUK発のアシッド・ジャズ/ストリート・ソウルを全世界に広めた偉大なインディペンデント・レーベルだ。そのトーキン・ラウドのファースト・リリースとなったのが、ガリアーノの90年のシングル「Welcome To The Story」だった。

ロブ・ギャラガーを中心に結成されたガリアーノは、すでに87年にエディー・ピラーのアシッド・ジャズ・レーベルからシングル「Frederic Lies Still」をリリースしていたが、アシッド・ジャズ・レーベルの運営をサポートしていたジャイルズが、同レーベルを脱けてトーキン・ラウドを設立する際に、レーベルの看板アーティストに据えるべくガリアーノを引き抜いた格好だ。

個人的には、トーキン・ラウドのセカンド・リリースとなったレーベルのショーケース的なコンピレーション・アルバム『Talkin' Loud』が初めて聴いた同レーベルの作品であり、そこにヤング・ディサイプルズやインコグニートらとともに収録されていた「Little Ghetto Boy」が、初めて聴いたガリアーノの楽曲だった。
そして、91年には1stアルバムとなる本作『In Pursuit Of 13th Note』をリリース。同じ91年には他にも、ヤング・ディサイプルズ『Road To Freedom』や、オマー『There's Nothing Like This』といった重要作がトーキン・ラウドからリリースされ、自分も当時コレらの作品を夢中になって聴いていた。

本作で聴ける、生バンドの演奏とサンプリングを上手くミックスしたグルーヴィーなジャズ・ファンク・トラックは、そのままレア・グルーヴ・ムーヴメントと地続きのサウンド。レゲエやアフロ要素なども含めて、いかにもロンドンらしい空気が漲っている。
アシッド・ジャズ・シーン全体の盛り上がりが頂点に達した翌92年にリリースした次作『A Joyful Noise Unto The Creator』は、周囲の期待と創造性のピークが合致した、当時のアシッド・ジャズにとってシンボリックな作品で、個人的にもよりライヴ感の増したジャズ・ファンク聴けるその2ndアルバムが彼らの最高傑作だと思うが、この1stアルバムのフレッシュさも捨て難いものがある。

雄大なムードのジャズ・ナンバー「Leg In The Sea Of History」からアルバムはスタート。続く「Welcome To The Story」はリロイ・ハトソン「All Because Of You」をサンプリングしたメロウ・グルーヴィーなアシッド・ジャズ・クラシック。当時この曲が大好きで、その数年後に何も知らずにハトソンの「All Because Of You」を初めて聴いた時の感動ったらなかった。
フレディ・ロビンソン「Off The Cuff」使いのブルージーでアーシーな「Coming On Strong」、即興ジャズにスキャットを乗せた「Sweet You Like Your Favourite Gears」、タブラ入りでインドなムードの「Cemetary Of Drums(Theme From Buhaina)」と「Five Sons Of The Mother」、ギター・カッティングがカッコいいジャズ・ファンク「Storm Clouds Gather」、「Nothing Has Changed」はヴィブラフォンが気持ちよく転がるサマー・メロウ・グルーヴ。「57th Minute Of The 23rd Hour」もヴィブラフォンがメロウに光るミッドナイト・ジャズ。

「Power And Glory」は、ロイ・エアーズ「He's A Superstar」をサンプリングしたグルーヴィーなジャズ・ファンクでカッコいい。オルガンのループがファンキーな「Stoned Again」、レゲエ調の「Reviewing The Situation」、「Little Ghetto Boy」はもちろん、ダニー・ハサウェイの同名曲をモチーフ。
フリーダム「Get Up And Dance」をサンプリングしレゲエっぽいギターが入った「Me My Mike My Lyrics」、まったりしたミディアムの「Love Bomb」、「Power And Glory(Live Jazz Mix)」はオリジナル・ヴァージョンからサンプリングを排し、よりライヴ感を強調したミックス。ラストの「Welcome To The Story(A Good Mix)」はメロウなヴィブラフォンが添えられたジャジー・グルーヴ。