1999
1999 Super Deluxe Edition  (2) / Prince
 Warner Bros. '19 

『1999』スーパー・デラックス・エディションのレヴュー後編。

DSC_0047 (1)
Disc.4  Vault Tracks Ⅱ

ディスク4は82年4月から83年1月までに録音された11曲を収録。

M-1. Possessed(1982 Version) 
『Purple Rain Deluxe Expanded Edition』に収録された「Possessed」の初期ヴァージョン。その84年版よりも生っぽい感触で、軽快なギターもファンキーで爽快。個人的にはこの82年版の方が好み。

M-2. Delirious(Full-Length) 
「Delirious」の2分ほど長いフルレングス・ヴァージョン。これがこの曲の本来の姿であったわけで、当然ながら水増し感などまったく感じられない。『1999』には他にも「Automatic」とか「D.M.S.R.」とか長尺の曲があるのだから、コレも編集せずにそのまま収録すれば良かったのに。

M-3. Purple Music
今回の未発表曲群の中でも、おそらく最大の目玉と言えそうなのがこの曲。
リン・ドラムを軸に組み立てたテクノっぽいデジタルな質感のサウンドは「All The Critics Loves U In New York」に通じるが、それよりももっとファンキー。縦割りのビートにギター、ベース、キーボードなどが流されグルーヴィーに進行していく。フィルターを通したようなヴォーカルで歌われ、抑揚の抑えられたラインは「I Would Die 4 U」を思わせたりも。

M-4. Yah, You Know
重く鈍いエレクトリック・ビートに素っ頓狂なシンセ、妙にポップなメロディーが弾む。プリンスのヴォーカルも風変りで面白い。

M-5. Moonbeam Levels
物哀しくも美しいピアノ・バラード。2016年のベスト盤『4Ever』の目玉曲として既に世に出ていたが、「Moonbeam Levels」はブートではお馴染みの曲だったということもあり『4Ever』は買わなかったので、今回収録されたことは嬉しい。

M-6. No Call U
これまた「Delirious」タイプのロカビリー調。ストンプするようなビートや、キーボードのリフも楽しげでノリノリのブギー。

M-7. Can't Stop This Feeling I Got
90年のアルバム『Graffiti Bridge』のオープニングを飾った曲の初期ヴァージョン。正規版と比べるとドラムの響きが生々しく、シンセのフレーズも効いていて、より勢いのあるロックンロール・ナンバーになっている。

M-8. Do Yourself A Favor
プリンスがまだデビュー前の75年(17歳!)に録音に参加した、親戚のペペ・ウィリーのバンド、94イーストの曲のカバー。だが当時は「If You See Me」というタイトルで、自分の手持ちのCDでは『Symbolic Beginning Volume 1』にはヴォーカル入りヴァージョンが、『Symbolic Beginning Volume 2』にはインスト・ヴァージョンが収録されていた。
原曲も結構気に入っていたのだが、プリンスはギターの演奏のみで、ペペのヴォーカルの弱さは否めないところだった。この「Do Yourself A Favor」はプリンスのヴォーカルがやはりイイのはもちろんだが、曲自体の印象が原曲とはだいぶ異なり、ドライヴ感溢れる演奏で原曲を上回る出来になっている。
後にジェシー・ジョンソンも86年の2ndアルバム『Shockadelica』で「Do Yourself A Favor」のタイトルでカバーしているが、ジェシーが参考にしたのも間違いなく94イーストの原曲ではなく、このプリンスのヴァージョンの方だ。

M-9. Don't Let Him Fool Ya
個人的にはこういうタイプの曲は大好物。リズムの切れ味鋭いタイトでソリッドなファンク・チューンで、"Hey, Hey, hey, Hey~"って歌うラインは一緒に口ずさんじゃう。サクッと作ったようなラフな曲なんだけどカッコいい。

M-10. Teacher, Teacher
『Parade』の後に制作され、『Sign Of The Times』の原型のひとつともなった幻のアルバム『Dream Factory』に収録される予定だった曲の、初期ヴァージョン。
『Dream Factory』版ではウェンディとリサがヴォーカルを取るポップでほんわかした曲調だったが、プリンスが歌うこの初期ヴァージョンのもっと骨っぽいロックな仕上がりは「Dirty Mind」にも通じるものがある。

M-11. Lady Cab Driver / I Wanna Be Your Lover / Head / Little Red Corvette(Tour Demo)
これまた驚愕の音源。これは、ライヴでのレヴォリューションの演奏の手本とするために、プリンスが1人でスタジオで録音した教則用テープとのこと。このような教則テープ作りが日常的に行われていたのかどうかは分からないが、自分の指示どおりにバンドが演奏できるように、超多忙の合間を縫ってプリンスはいちいちこんなテープを作ってたのかと思うと、驚きで声も出ない。
プリンスによるワンマン・スタジオ・ライヴ、内容はもちろん素晴らしい。


DSC_0030 (2)
Disc.5  Live In Detroit 11/30/82

5枚目は82年11月30日に行われた、デトロイトのメゾニック・テンプル・シアターでのライヴ音源。
この時のレヴォリューションのメンバーは、デズ・ディッカーソン(G)、ブラウンマーク(B)、ドクター・フィンク(key)、リサ・コールマン(Key)、ボビーZ(Dr)、そしてバック・ヴォーカルにジル・ジョーンズ。
『1999』がリリースされた直後、これからスターダムを駆け上がらんとするプリンスの若さと勢いに溢れた最上のライヴ。音質も良く、素晴らしい内容だ。

ライヴのオープニング・ナンバーは「Controversy」。超タイトなリズム・セクションにストイックに刻みまくる細切れギター・カッティングが最高なファンクで幕開け。続く「Let's Work」もキレッキレの弩ファンキーで堪らん。
「Little Red Corvette」の見せ場はデズのギター・ソロ、カッコいい。「Do Me, Baby」はタイトなドラムと太くハリのあるベースのグルーヴに身を委ね、プリンスの狂おしくも美しい歌唱に悶絶。

ここまでは『Controversy』からの曲が中心だが、続いては『Dirty Mind』から2曲。ドクター・フィンクのキーボード・ソロが冴える「Head」、「Uptown」はドラム・マシンの太いビートが貫き、クソカッコいいリズム・ギター、そしてあのシンセ・リフが轟く。いずれもスタジオ録音版よりも速いテンポで演奏され、ファンクの骨格がクッキリと浮かび上がる。

シンセサイザーのインタールドを挟んでキーボード弾き語りの「How Come U Don't Call Me Anymore?」。ここでのプリンスの歌唱の素晴らしさ、そして聴衆の熱狂ぶり。
そしてここからは『1999』収録曲で畳み掛ける。これもテンポ・アップして演奏される「Automatic」、離陸する飛行機のSEとともに始まるロマンティックな「International Lover」の、曲終盤のプリンスのパフォーマンスはDVDにて是非確認を。
そしてラス前でようやく「1999」。世紀末パーティー・ファンクにコレはもう盛り上がること必至。ショウの締め括りは「D.M.S.R.」。Dance, Music, Sex, Romance、もうコレ以上の言葉はいらない。


DSC_0032 (5)
DVD  LIve In Houston 12/29/82

最後はDVD。ディスク5のライヴから1か月後、ヒューストンのザ・サミットでのステージ。
まだ後年のような派手な演出は無く、ステージ・セットもシンプル。プリンスの衣装替えも紫のジャケットとコートを(ラメのコートも)チェンジするだけ。24歳のプリンスの若さと才能とエネルギーが迸る、圧巻のライヴが繰り広げられる。

以下、個人的な見どころ。
・「How Come U Don't Call Me Anymore?」でキーボードの上に寝っ転がって受け身を取るプリンス。
・プリンスより先に脱いじゃってるデズ
・「Lady Cab Driver」で、「1999」のPVと同じ帽子を被ってリサの隣にいるジル
・「Lady Cab Driver」でジミヘンばりに歯でギターを弾くデズ
・「International Lover」でプリンスが一瞬見せる、五木ひろし(のモノマネをしている清水アキラ)のようなムーヴ
・「International Lover」で雲梯ブランブランするプリンス
・「International Lover」で飛行機が離着陸するかのように激しく腰を上下動させるプリンス
・ランジェリー姿のジル。エロっ。
・「1999」でのプリンス、デズ、ブラウンマーク揃い踏みのステップ。カッコいい。
・「Head」でチョッパーキメまくるブラウンマーク