golden child
Golden Child / Judith Hill
 @Gloryhill Music '18 

今年も新譜は数えるほどしか買ってないのだが、その中では1番よく聴いたのがこのジュディス・ヒルの『Golden Child』だ。正確には2018年のリリースだが、当初フィジカルの流通が無く、ようやくAmazonで買えたのが今年2月になってからだった。すっかりレヴューしそびれていたのだが、年が変わる前にと慌てて取り上げる次第。

彼女の両親、ベーシストのロバート・ヒルと鍵盤奏者のミチコ・ヒルの夫妻は、かつてスライ&ザ・ファミリー・ストーンやルーファスのバックで演奏していたのだそう(スライの妹、ローズ・ストーンの2007年作『Already Motivated』もヒル夫妻が全面的にバックアップしていた)。
当然、そんな両親から大きく影響を受けたハズのジュディス、きっと幼い頃からファンクに親しんでいたのだろう。長い下積みを経た後にプリンスに認められ、プリンスとジュディスが共同でプロデュースした1stアルバム『Back In Time』。制作にあたって、どういう作品にしたいかとプリンスから問われ、「スライ」と答えたというだけあって、『Back In Time』はファンクネス溢れる傑作だった。

余談だが、『Back In Time』のCDも当初なかなか手に入らず、やはり同様に入手しづらかった『Hit N Run Phase Two』と一緒にミネアポリスの殿下御用達レコード店 Electric Fetus から取り寄せた。その2枚を繰り返し聴きながら、何度目かの黄金期の到来を確信したその直後に、プリンスは突然旅立ってしまった。そういったこともあり、『Back In Time』は個人的にも感慨深いものがある作品だ。

3年ぶりの2ndアルバムとなる本作は、自主レーベルからのリリースで、ジュディスのセルフ・プロデュース。参加ミュージシャンは彼女の両親の他に、ギターはルーファスのトニー・メイデン、スパンク『Tighten It Up』やメイズ『Live In Los Angeles』でドラムを叩いていたマイケル・ホワイトという面子。ジュディス自身もピアノやギターを演奏し、またストリングスやホーン・アレンジまで自ら手掛ける。もちろん全曲自作だ。
こういった自主独立の精神や、メインストリームのサウンドに阿ることなく自身の音楽を追求する姿勢は、確実にプリンスから受け継いだもの。本作もまたジュディス・ヒルのファンク/ソウル・ミュージックを貫いた、1stに負けず劣らずの傑作だと思う。

アルバム・オープナーのタイトル曲「Golden Child」は、輝くストリングス・アレンジと伸びやかなヴォーカルがこれから始まる豊饒な音世界を約束してくれる。「Hey Stranger」は土の匂いのするオーガニックなグルーヴが心地よいソウル・ナンバー。「You Can't Blame Me」は拉げたドラム・ビートとブッといベースがグルーヴィーにウネるファンキー・チューン。
「The Pepper Club」も弾力のあるベースとタイトなドラム、ファンキーなギター・カッティングが弾けるJB調のファンク・ナンバー。ホーンも分厚く盛り立てるこの曲は、「Musicology」の頃のプリンスを思わせてくれたりも。いやコレ最高。「Irreplacable Love」は情感溢れるディープなソウル・バラード。

「Chasing Rainbows」はちょっとアンビエントな浮遊感を感じさせる神秘的な雰囲気。「I Can Only Love You By Fire」はギターが嘶き重いビートがのた打つヘヴィー・ロック。「Gypsy Lover」はルーファスっぽいファンク・チューンで、トニー・メイデンのファンキーなワウ・ギターに、チャカからの影響も顕著なジュディスのヴォーカルが駆け巡る。
「Queen Of The Hill」はドロリとウネるスロー・ファンク。ラストの「We Are One」はジュディスの力強い歌唱と分厚いバック・ヴォーカルでグイグイと盛り上がっていくパワー・チューン。