rhythm king

リズム・ボックス使いのファンク・ナンバーをまとめたプレイ・リスト、その2。
前回も書いたように、リズム・ボックスを使ったファンク/ソウル曲というのはそう多くない。その先駆者となったのは、ファンク界の巨人スライ・ストーン。以降、リズム・ボックスと格闘した数少ない黒人ミュージシャン達の、おそらくそのほとんどはスライの影響下にあると言っていいと思う。スライのお膝元であるベイエリア周辺と並んで、リズム・ボックス・ファンク/ソウルの2大産地であるフロリダ/マイアミの連中にしてもそうだろう。
以下、各曲について、リズム・ボックスについてよりも、スライの影響についてのコメントが多くなってしまったが、個人的にお気に入りのリズム・ボックス・ファンク16曲。


M-1
Africa Talks To You(The Asphalt Jungle) / Sly & The Family Stone
 from 『There's A Riot Goin' On』


リズム・ボックス・ファンクの開祖スライ・ストーン。69年~70年頃に自主レーベル、ストーン・フラワーでの、リズム・ボックスに生ドラムやベース、ワウ・ギターを絡ませたファンク・サウンドの実験を経た後の71年のアルバム『暴動』では、「Family Affair」や「Luv N' Haight」、「Poet」、「Spaced Cowboy」などアルバムの通奏低音としてリズム・ボックスの乾いた音が不気味に鳴り響いている。
当初アルバム・タイトルになるハズだったという「Africa Talks To You(The Asphalt Jungle)」の、リズム・ボックスのチープな音を軸に各楽器がポリリズミックに絡みつつウネるグルーヴは、特にアフリカ的な要素など無いにも関わらず楽曲全体としては土着的なアフロ成分が濃厚に臭う。


M-2
Communication / Bobby Womack
 from 『Communication』


『暴動』のレコーディングにも参加したボビー・ウォマックは、そこでスライから大いに刺激を受け、70年代前半には『Communication』『Understanding』といったファンク/ニュー・ソウル志向の強い名作を作っている。
なかでもスライの影が色濃く反映されているのが『Communication』冒頭のタイトル曲で、リズム・ボックスにウネウネと漂うワウ・ギターとホーン・セクションが絡むルーズなスロー・ファンクは、悪友スライから触発されたとしか思えない。


M-3
You Haven't Done Nothin' / Stevie Wonder
 from 『Fulfillingness' First Finale』


スティーヴィーが自身のファンク・サウンドを確立する過程でスライから影響を受けただろうことは、『Where I'm Coming From』『Music Of My Mind』を聴けば明らかだが、クラヴィネットの大胆な活用(これについては両者相互に影響関係にあると思うが)に対し、スティーヴィーのリズム・ボックス使用例はほとんどない。
そんな中で、この74年の大ヒット曲「You Haven't Done Nothin'」の、曲のアタマの部分でキーボードのフレーズとともに現れるリズム・ボックスは、すぐにヘヴィーなドラムス&ベースにクラヴィネットが被せられ埋もれてしまうが、スティーヴィーによるリズム・ボックス使用の稀有なサンプルとして記しておきたい。


M-4
Ride On / Parliament
 from 『Chocolate City』


Pファンクとリズム・ボックスと言えば、何はさて置きこのアルバムの1曲目「Chocolate City」だし、前作『Up For The Down Stroke』収録の、まんま『暴動』サウンドの「The Goose」あたりになるが、いずれの曲も前回取り上げてしまっているので、ここでは「Ride On」を。
ブーツィーのミュートロン噛ませてブヨンブヨンと唸るベースが凄まじい破壊力だが、"The Man In The Box" とクレジットされたリズム・ボックスに、ティキ・フルウッド(or タイロン・ランプキン)の生ドラムが被せられたビートが、暴れまくるベースをしっかりと下支えしている。


M-5
Why? / Graham Central Station
 from 『Graham Central Station』


スライがリズム・ボックスをイジくり倒して実験していた頃には、既に関係悪化しファミリー・ストーン脱退寸前だったハズのラリーだが、独立後に立ち上げたグラハム・セントラル・ステーションではスライ同様にリズム・ボックスを重用。特に最初の2枚のアルバム、『Graham Central Station』と『Release Yourself』はリズム・ボックス含有率が高い。
1stアルバム収録の「Why?」は、ヘヴィーなファンクがギッチリ詰まった同アルバムにおいては些か軽めではあるけれど、リズム・ボックスにワウ・ギターが絡みつき走るグルーヴィーなトラックに、紅一点のパトリース "チョコレート" バンクス(ヴォーカル 兼 Electric Funk Box 担当)が歌う。


M-6
Thankful N' Thoughtful / Sly & The Family Stone
 from 『Fresh』


『暴動』の次作『Fresh』でもスライはリズム・ボックスを使っているが、『暴動』では骨太なリズム・ボックスのビートがゴリゴリと主張するタイプの曲が多かったのに対し、『Fresh』では、曲の冒頭で先導するリズム・ボックスにアンディー・ニューマークのドラムが被さっていく「In Time」に代表されるように、ドラムスとリズム・ボックスの有機的な絡みつきからより生々しく肉感的なグルーヴを生み出している。
「Thankful N' Thoughtful」もリズム・ボックスとドラムスのグルーヴの上に、ベースやワウ・ギターなどがルーズに垂れ流されたポリリズミックなリズム、やたらカッコいいホーン・アレンジ、スライの突き抜けたファンキー歌唱とリトル・シスターの掛け合いが入ったスロー・ファンクの逸品。


M-7
Life & Death In G & A / Joe Hicks
 from 『I'm Just Like You : Sly's Stone Flower 1969-70』


70年前後にスライやボビー・ウォマックらとツルんでいたソウル/ブルース・シンガーのジョー・ヒックスは、スライのプロデュースでシングルを2枚リリースしている。
69年にセプターからリリースした「Home Sweet Home / I'm Goin' Home」は、AB面とも全盛期ファミリー・ストーンがバックを付けた強力なファンク/ソウル・ナンバー。一方、ストーン・フラワーからのリリースとなった70年の「Life & Death In G & A」は凶悪なリズム・ボックスが牙を剥く暗黒スロー・ファンクで、プレ『暴動』的なサウンド・プロダクション。
これらシングルの3曲はすべてフラワー・ストーンのレーベル・コンピレーション『I'm Just Like You : Sly's Stone Flower 1969-70』で聴くことができる。


M-8
Foxy Lady / Willie Hutch
 from 『Foxy Brown』


モータウンのライター/プロデューサーとしてジャクソン5の多くのヒット曲を手がけ、またサム・クック譲りのメリスマを聴かせるソウル・シンガーとしても魅力的なウィリー・ハッチ。彼もまたリズム・ボックスの愛用者で、70年代半ばの『The Mark Of The Beast』や『Ode To My Lady』といった作品でリズム・ボックスを大幅に導入しているが、同じ時期にハッチが手掛けたパム・グリア主演の映画『Foxy Brown』のサントラでも、数曲でリズム・ボックスの音が鳴り響いている。
「Foxy Lady」はチープなリズム・ボックスの刻みにワウ・ギターとクラヴィネットがグニャグニャと絡み合いグルーヴするルーズなファンキー・チューンで、やはり彼もスライの作法を学んでいるということが分かる。


M-9
Deep In You / Timmy Thomas
 from 『You're The Song I've Always Wanted To Sing』


マイアミの鍵盤奏者、ティミー・トーマスの1stアルバム『Why Can't We Live Together』は、全編リズム・ボックスとオルガンだけという異形のローファイ・ソウル怪作として名高い。プロデューサーのスティーヴ・アレイモは、1stでは敢えてデモ・テープに手を加えずそのままリリースしたとのことだが、2ndアルバムの『You're The Song I've Always Wanted To Sing』は、リズム・ボックスにバンドの演奏を付けてソウル・アルバムとしての完成度を高めた。
アルバム中で最もファンキーな「Deep In You」も、シュコシュコ鳴るリズム・ボックスにドラムが重ねられ、鍵盤の他、ベース、ギターも入ってしっかり厚みのあるグルーヴを繰り出している。


M-10
I Can Dig It Baby / Little Beaver
 from 『Party Down』


『Why Can't We Live Together』と並ぶ、マイアミの2大リズム・ボックス名盤『Party Down』。ジャジーでブルージーでメロウなアフター・アワーズ感にトロける「Party Down」が何と言っても素晴らしいのだけれど、ファンクということで言えば、前回取り上げた「Let The Good Time Roll」や、この「I Can Dig It Baby」が聴きモノ。
チープに転がるリズム・ボックスにリトル・ビーヴァーのワウ・ギターが絡む、グルーヴィーでメロウでレイジーなファンキー・チューンで、気だるげなヴォーカルもまったりと心地よい。


M-11
Love, love, Love / 94 East featuring Prince
 from 『Symbolic Beginning Volume 2』


プリンス愛用のドラム・マシンと言えば当然リン・ドラムなワケで、リズム・ボックスの使用例ってちょっと思いつかない。
この「Love, Love, Love」は、デビュー前に手伝った親戚のぺぺ・ウィリーのバンド、94イーストの曲で、プリンスはギターとベースを弾いている模様だが、作曲/プロデュースはぺぺで、リズム・ボックスを使うアイディアも当然ペペのものだろう。
曲自体もファンキーなダンス・ナンバーで結構イイのだが、リズム・ボックスのグルーヴに乗ったプリンスのギターとベースは、既にこの時点で素晴らしい。


M-12
Rainbow Lake / Wendy & Lisa
 from 『Eroica』


レヴォリューション脱退後のウェンディ&リサの3rdアルバム『Eroica』は、『Around The World In A Day』『Parade』あたりのムードが漂っていて好きなのだが、ファンキーなナンバーになるとプリンスの向こうにスライが透けて見えるようで興味深い。
アルバムのオープニング・ナンバーである「Rainbow Lake」は、くぐもったリズム・ボックスが鳴るサイケデリックでクールなファンクで、彼女らがレヴォリューションに持ち込んだものと、プリンスから受け継いだスライの遺伝子が混ざり合っている。


M-13
Just Friends / Eric Benet
 from 『True To Myself』


エリック・ベネイの1stアルバム『True To Myself』に収録されている「Just Friends」で聴かれる武骨で殺伐とした音が、本物のリズム・ボックスの音なのか、それともドラム・マシンをリズム・ボックスっぽく響かせているのか分からないが、この無機質ながらも粘り気のある(こういう所が実にスライっぽい)サウンドが曲のムードを支配している。
このアルバムには「If You Want Me To Stay」のカバーもあったりするので(しかもプロデュースはロジャー)、「Just Friends」もスライからの影響が顕れた1曲なのだろう。


M-14
Dance Wit Me / Gavin Christopher
 from 『Gavin Christopher』
gavin christopher
シカゴ出身のソング・ライター/シンガーのギャヴィン・クリストファーは、ルーファス加入以前のトニー・メイデンとボビー・ワトソンらとバンドを結成していたとのこと。メイデン&ワトソンは74年の『Rufusized』からルーファスに加入、翌75年の『Rufus featuring Chaka Khan』からのヒット曲「Dance Wit Me」はギャヴィンが書いた曲で、もしかしたらこの曲はメイデンらとのバンド時代のレパートリーなのかも。
76年のギャヴィンの1stアルバムには、この「Dance Wit Me」のセルフ・カバーが収録されているが、ここではリズム・ボックスにドラムを合わせている。流石にルーファス版の方がタイトで完成度高いが、このギャヴィン版のユルファンキーさも捨て難い。


M-15
Somebody's Watching You / Little Sister
 from 『I'm Just Like You : Sly's Stone Flower 1969-70』


ストーン・フラワー・レーベルからの1stリリースとなったリトル・シスターの「You're The One」は、当時絶頂期にあったファミリー・ストーンが鉄壁のバッキングを付けた素晴らしいファンク・ナンバーだったが、続く2枚目のシングル「Stanga / Somebody's Watching You」では様相が一変、ここで初めてリズム・ボックスが導入された。
「Stanga」は前回取り上げているので、今回はB面の「Somebody's Watching You」を。熱いファンク・ロックが爆発するアルバム『Stand!』の中にあって、例外的に冷めた感触が異彩を放っていた曲のカバーだが、グレッグ・エリコのドラムスに代わって鳴らされるリズム・ボックスが、曲により一層ダークな質感をもたらしている


M-16
XL-30 / Shuggie Otis
 from 『Inspiration Information』


シュギー・オーティスの早熟な異能ぶりが発揮されたアルバム『Inspiration Information』収録の「XL-30」は、シュコシュコと鳴り響くリズム・ボックスにシュギー自身がドラムスやキーボードの音を乗せたインスト曲。このファンキーでアブストラクトな感触はとても70年代の録音とは思えない。