stairsteps
Stairsteps / The 5 Stairsteps
 Buddah '70 

シカゴの兄弟ソウル・グループ、ファイヴ・ステアステップス。
67年のデビュー・アルバムのジャケットでは、まだほんの子供だった5人兄弟。2ndからは一番下の弟キュービーも加わり、ファイヴ・ステアステップス&キュービーと名を改め6人組に。3rdアルバムでは兄弟の父親が加わり7人組となったが、70年代最初のアルバムとなる4作目『Stairsteps』ではキュービーが外れて6人組に、グループ名も元のファイヴ・ステアステップスに戻している(次作からはステアステップスへと改名)。

ジャケットではすっかり大人っぽく成長した兄弟たちの姿を見ることができるが、アルバムの内容の方もキッズ・グループからの脱却・成長を印象付けるようなものであり、バブルガム色は抑えられ成熟したグループへと変わろうとしていることが分かる。
また、ソウルの枠に留まらずにロックやポップスへと音楽性の幅を拡げようという意志も見て取れるように思う。

そういったロック/ポップ志向はアルバムの最初の2曲、「Getting Better」「Dear Prudence」というビートルズ・ナンバーを取り上げていることに顕著に表れているように思う。この時代のソウル・シンガーがロック/ポップ系の楽曲をソウルフルにカバーすることは決して珍しくはないが、この2曲からはソウルっぽく仕立てようという意図が感じられない。

アルバムの3曲目以降のオリジナル曲も、ソウルやロック、ポップとの境界が曖昧な楽曲が多い。ポップな「Sweet As A Peach」、歪んだギターがロックな「Vice The Lights」、バラードの「Because I Love You」、親父さんと思しき太くノッペリした声で歌われるスロウ「What About Your Wife」など、オリジナル曲のほとんどは長兄のクラレンス・バークJr.の作曲で、後に才能が開花する弟ケニほどのソングライターとしての才は感じられないが、なかでは「Who Do You Belong To」が比較的オーソドックスなソウル・ナンバーで悪くない。

このようにソウル・アルバムとしてはややビミョーな内容の作品ではあるが、やはり「O-o-h Child」だけは別格。アルバムのプロデュースとアレンジを担ったスタン・ヴィンセントのペンによるこの曲、数多くのカバーも生んだ名曲であり、このグループの代表曲でもあるが、その楽曲自体の良さはもちろんのこと、ジェローム・ブレイリーのドラムも大きなインパクトを残す。この後チェンバース・ブラザーズを経てPファンクへと加入するジェロームのキャリア最初期の仕事と思われるが、ここで早くもあの独特の間合いのドラミングの片鱗が窺えるのが興味深い。
おそらくアルバムの他の楽曲でもジェロームがドラムを叩いていると思われるが、「Because I Love You」「Who Do You Belong To」では少し自己主張してみるものの、ここまでドコスカ叩きまくってるのは「O-o-h Child」ぐらいで、他の曲では割合おとなしく堅実なプレイを聴かせている。