a view from another place
A View From Another Place / Wayne Davis
 Atlantic '73 

70年代に2枚のアルバムを残した鍵盤奏者/シンガーのウェイン・デイヴィス。
本作『A View From Another Place』はそのうちの1枚目の作品。
本作で目を惹くのは、裏ジャケにコメントも寄せているロバータ・フロックの存在だろう。ロバータはアルバムのプロデュースの他、アレンジもウェインと共同で手掛けている。
ウェイン自身のピアノと歌を中心にした内省的な作品といった印象で、アルバム全体を覆うしっとりとした静謐さは、ロバータ作品にも共通するムードがある。
演奏陣で特筆すべきは、やはりドラムスのバーナード・パーディーとベースのジェリー・ジェモットの全面的な参加で、落ち着いた雰囲気の楽曲が大半を占めるなか、数曲あるファンキーなナンバーでは、この百戦錬磨のリズム隊がウネりのあるグルーヴを繰り出してくる。

ジワジワと昂揚していくゴスペル・ソウル・ナンバー「Sweet Bird Of Youth」、ジミー・ウェブ作の感動的なバラード「Mixed Up Guy」、ゆったりとしたゴスペル・バラードの「How's Mama's Baby」、ステイプル・シンガーズのカバー「I Like The Things About Me That I Onece Despised」はアレサ・フランクリン「Rock Steady」を思わせるようなファンキー・チューン。

スライ「Somebody's Watching You」のカバーは、パーディー&ジェモットのリズム・セクションがグルーヴィーにウネるファンクで、ウェインのヴォーカルも熱くソウルフル。個人的にはコレが本作のベスト・トラック。「I Love You So」はロバータがエレクリック・ピアノを弾くスロウ。ラストの「Joel 2:28」は11分に及ぶナンバーで、パーディーが十八番のダチーチーを繰り出すグルーヴィーなファンク・チューン。

この後、ウェインはワンネス・オブ・ジュジュなどが在籍したレーベル、ブラック・ファイアから76年にアルバムを1枚リリースしているがこちらも好内容。また、同じく当時ブラック・ファイアに所属していたEU(エクスペリエンス・アンリミテッド)の77年作『Free Yourself』にも参加しているが、以降はゴスペルへと活動の軸を移した模様。