satisfaction
Satisfaction / Aurra
 Family Groove '13 

スレイヴのリーダー/プロデューサーのスティーヴ・ワシントンが、スレイヴとは別に興したファンク・ユニット、オーラ。
スレイヴ最高傑作の『Stone Jam』と同じ1980年にリリースされた1stアルバム『Aurra』には、マーク・アダムスやスティーヴ・アーリントン、フロイド・ミラーらスレイヴの主力もバックアップ。スレイヴ全盛期の凄味をたっぷり味わえる傑作だった。

スティーヴは『Stone Jam』を最後にスレイヴを脱退、オーラの男女ヴォーカル、カート・ジョーンズとスターリナ・ヤングもスティーヴに同調し、オーラはスレイヴ以降のスティーヴの音楽制作の主戦場となる。
オーラは83年までに4枚のアルバムをリリースしているが、本作『Satisfaction』はオーラ5枚目のアルバムとして83年にレコーディングされるもお蔵入りとなってしまった幻の作品とのことで、2013年になって発掘リリースされた。

しかし、本作はオーラの名を冠してはいるものの、厳密にはオーラの作品とは言い難い部分がある。スティーヴが全面的に制作した作品なのはオーラ諸作同様だが、オーラの看板シンガー2人はここには一切関与していない。
日本盤ライナーによると、カートとスターリナがギャラをめぐってスティーヴと揉め、2人はオーラを脱退。2人の代わりにスティーヴは、元ブライズ・オブ・ファンケンシュタイン(『Never Buy Texas From A Cowboy』時の第2期メンバー)で、自身の妻でもあるシーラ・ホーンと、チャカ・カーンの兄であるマーク・スティーヴンスをヴォーカルに据え、本作『Satisfaction』を制作。オーラ2作目以降所属していたサルソウルではなく、クインシー・ジョーンズのレーベル、クエストとディールを結んだものの、カート&スターリナ側からクレームが入りリリースが見送られたのだそうだ。

つまり、シーラ・ホーンをヴォーカルに立てたスティーヴのプロジェクトという意味で、本作は同じ83年にサルソウルからリリースされたシヴィル・アタックと表裏一体の作品、と言うことができるのではないか。
シヴィル・アタックと本作、前後関係は不明だが、辛口でハードなリズム・フィギュア、異様なまでにメタリックで壮絶なヘヴィー・ファンク・サウンドは、両作に共通している。
スティーヴが全面的にプロデュースし、多くの楽器を演奏している他、スレイヴのギタリスト、"ドラック"ことマーク・ヒックスや、ACドラマー(という名前の人で、この人もギタリスト)が参加しているのも両作共通だ。

アルバム冒頭の「Turn The Lights Down Low」から辛口でメタリックな、まんまシヴィル・アタックなファンク・ダンサーで痺れる。アルバム・タイトル曲「Satisfaction」はマーク・アダムスを思わせる硬質なベースをシゴキあげるヘヴィー・ファンク。
「Never Met No One Like You」はPファンクっぽくヘヴィーにバウンスするエレクトロ・ファンク・チューン。「My Lovin' Is You」は本作中唯一のスロウ・ナンバー。

「Perfect Date」もマーク・アダムスなベースがバッキバキのスレイヴリーなファンク・ダンサー。「Something Tells Me」はキラキラしたシンセ・サウンドとドライなリズム・セクションの対比もヒリヒリさせるファンク・チューン。
哀愁滲むエレクトリックなブギー・ファンク「Maybe I'm Wasting My Time」、「Hide & Seek」はロボティックなトーク・ボックスを導入したサイバー・ファンク。