hall of fame
Ⅰ / Steve Arrington's Hall Of Fame
 Atlantic '83 

1978年のスレイヴの3rdアルバム『The Concept』から6thアルバム『Show Time』までの4作で、ドラマー、そしてメインのヴォーカルとして大きく貢献したスティーヴ・アーリントン。この4作のうち、特に80年の『Stone Jam』と81年の『Show Time』は壮絶な内容で、80年代屈指のヘヴィー・ファンク・アルバム。スレイヴの全盛期がそのままスティーヴの在籍期間と重なっているのも、彼の脱退後にスレイヴが失速していったのも必然だった。

スレイヴ脱退後にスティーヴは自身のバンド、ホール・オブ・フェイムを結成。83年にリリースしたのが本作『Ⅰ』。
ホール・オブ・フェイムはスティーヴを含め8人編成のバンド。このバンドのメンバーの中で最も重要と思われるのがキーボード/サックス奏者のチャールズ・カーター。『Stone Jam』『Show Time』でスレイヴの正規メンバーとなり、オーラの初期メンバーでもあった人で、スティーヴと行動を共にしスレイヴを脱退しホール・オブ・フェイムに参画。スティーヴと、やはりスレイヴのプロデューサーだったジミー・ダグラスと共に本作のプロデューサーも務めるチャールズは、スティーヴの右腕的存在だったのではと思う。

その他には、チャールズの兄弟で、やはり『Show Time』やオーラの1stアルバム『Aurra』にも参加していた鍵盤奏者のサム・カーター、これもやはりチャールズと共にオーラ初期メンバーの1人だったベーシストのバディ・ハンカーソン、『Riding High』で知られる同郷オハイオのバンド、フェイズ・オーの元ドラマーで、『Show Time』にも参加していたロジャー・パーカーらがホール・オブ・フェイムのメンバーに名を連ねる。

斯様な布陣で制作されたアルバムだけに、本作で聴けるサウンドはやはりスレイヴ色が強く、重量感のあるドラムスに強靭で硬質なベースが主導する、「Watching You」や「Wait For Me」を髣髴とさせるファンク・サウンドが楽しめるが、やはり83年ということもあり、シンセサイザーのエレクトリックな質感も増しているが、ファンクの肉体性もまだしっかりと残っている。
マルチ・ミュージシャンでもあるスティーヴはヴォーカルとドラムス以外にもベース、ギター、キーボードなども演奏、アルバム制作をコントロールしており、当然ながらスレイヴ時代よりもスティーヴのパーソナルなカラーが大きく作品に反映されているものと思える。

スティーヴのヴォーカルは、『The Concept』の時点ではまだ幾分頼り無げに聴こえる部分もあったが、作品を重ねるごとにその特異な声質を最大限生かしたヴォーカル・スタイルを確立していき、本作ではあの独特な歌唱に更に磨きがかかっている。正直に言って歌い手としては恵まれた声質ではないし、ソウル・シンガーとしては非力だが、ネチッこく捏ねくり回すような唱法や、時折聴かせるノドを絞るようなハイトーンの甘酸っぱさは、キース・スウェットをはじめニュージャック・エラのナヨ声系男性シンガーたちへ継承されている。

本作の収録曲では、まずは何と言ってもアルバムのオープニングを飾る「Nobody Can Be You」だろう。スレイヴのサウンドを一層クールで都会的に響かせたようなブギー・ファンクで、繰り返し歌われるフックが耳にこびりついて離れない。
スティーヴ節の独特なヴォーカルでメロディを捏ね繰り回す「You Meet My Approval」は、ソリッドかつマッシヴなスレイヴっぽいヘヴィー・ファンク。ほんわかメロウなミディアム「Last Nite / Nite Before」、「Strange(Soft & Hard)」は辛口のハードなファンク・チューン。

「Speak With Your Body」は重量感たっぷりのドラムスに弾けるハンド・クラップ、そしてブッといゴリゴリのベースというスレイヴリーなヘヴィー・ファンク。「Weak At The Knees」は強烈なビートにまたもマーク・アダムス的な鋼のベースをシゴキ倒すクールなヘヴィー・ファンク・チューン。
「Beddie-Biey」はア・トライブ・コールド・クエスト「The Chase, Part Ⅱ」でのサンプリングも強く印象に残る、不思議な浮遊感に溢れたメロウ・フローター。ラストの「Way Out」はアーバンなムード漂うシンセサイズドなブギー・ファンク。