a little spice
A Little Spice / Loose Ends
 MCA '85 

ギター/ベース担当のカール・マッキントッシュ、鍵盤奏者のスティーヴ・ニコル、ヴォーカルのジェーン・ユージンの3人によりロンドンで結成されたグループ、ルース・エンズ。
82年頃からシングルを数枚リリースしているようだが、グループが大きな飛躍を遂げたのは、アメリカ人プロデューサー、ニック・マーティネリの助力を得るようになってから。ニックがプロデュースとアレンジで大きく貢献した84年の1stアルバム『A Little Spice』は、当初UK及びヨーロッパのみのリリースだったようだが、1stアルバムには未収録だったシングル「Hangin' On A String(Contemplating)」がUSのR&Bチャート1位の大ヒットとなったことを受けて、アメリカでは『A Little Spice』に同曲を収録し(代わりに1曲削り)曲順も入れ替えて85年にリリース。やはり自分にとってはこのUS盤の方が馴染み深い(と言うか、今回調べてみてUK盤に「Hangin' On A String」が入っていないことを初めて知った)。

時代を感じさせるTR-808のエレクトリックなマシン・リズムに、ニックが持ち込んだと思しき洗練されたブラック・コンテンポラリー・サウンド、そこにUKらしいウェットな情緒や、ジャズやラテン的な雰囲気をサラリと匂わせるのが、この頃のルース・エンズの魅力。
個人的には90年のグループ最終作『Look How Long』が、リアルタイムだったこともあって1番好きなのだが、あのアルバムは実質的にはカール・マッキントッシュのソロ・プロジェクトであり、当時世界を席巻していたグラウンド・ビートを取り入れた意欲作で、80年代のルース・エンズの諸作とは幾分性格の異なる作品だと思う。また、92年のリミックス・アルバム『Tighten Up Vol.1』も、カールが80年代のルース・エンズの楽曲を『Look How Long』的な視点で再構築しようとしたものではないかとも感じる。

アルバムのオープニングを飾るのは、グループの代表曲である「Hangin' On A String」。アーバンでメロウに洗練されたR&Bナンバーで、雨音のように滴るTR-808のカウベル音や、粋なフレーズを奏でるギターも非常に気持ちイイ。
サックスが煙る都会的なダンス・ナンバーの「Choose Me」も極上。哀愁ミディアム・スロウの「Music Takes Me Higher」、「Dial 999」はエレクトリックな感触のソリッドなブギー・ダンサー。

カールがリード・ヴォーカルを取る「Tell Me What You Want」もアーバンで濡れた質感にUKらしさが滲むダンス・チューン。アルバム・タイトル曲「A Little Spice」は、ほんのりラテン調のリズムにギターやキーボード、フルートが心地よく流されるインストの前半部分も良いが、ジェーンのヴォーカルが入ってきてからのアーバン・ジャジー・グルーヴな後半部分がまた素晴らしい。
「So Much Love」は「Tell Me What You Want」をよりポップにしたような感じ。ラストの「Let's Rock」はバリバリのエレクトリック・ファンク。