bobby caldwell
Bobby Caldwell
 Clouds '78 

ミスターAOR、ボビー・コールドウェル。
正直に言えば、この方面の音楽にはまったく疎いのだが、それでもこの名盤として名高いボビーの1stアルバムは気に入ってよく聴いている。

何と言っても、アルバム全体を覆う哀愁・黄昏ムードにどうしようもなく惹きつけられる。『イヴニング・スキャンダル』という邦題が(スキャンダルはともかくとして)ピッタリと来る、夕暮れ時にふと感じる寂寥感、愁いや切なさといった感傷が、このアルバムを聴いていると感じられるように思う。例えば夏の休日に海へと出かけた帰り道、夕暮れ時に高速を走る車の中でこのアルバムがかかったら、きっとドハマりするに違いない(試したことはないが)。

マイアミのTK傘下のレーベル、クラウズからリリースされた本作、レコーディングにはベニー・ラティモアやチョコレートクレイのジョージ "チョコレート" ペリーらTK周辺のミュージシャンが関わっている他、西海岸のエド・グリーンも参加しているが、ボビー自身も多くの楽器を演奏。もちろん曲はすべて自作。

オープニング・ナンバーの「Special To Me」 からアーバンな雰囲気たっぷりのAORソウルで、アルバム冒頭から黄昏ムードに染め上げる。「My Flame」はポロポロと奏でるカリンバの音も切ないセピア色の哀愁スロウ。
「Love Won't Wait」は華麗なストリングスを纏ったフィリー・ソウル・スタイルのメロウ・ダンサーで、これがまたなかなかの気持ちよさ。「Can't Say Goodbye」は粘っこいリズムのロック/AORナンバー。

「Come To Me」はロマンティックなAORバラード。「What You Won't Do For Love」は都会的なムードに男の哀愁とダンディズムが滲むようなアーバン・ソウル・クラシックで、メロディーもホーン・セクションも黄昏ムードがハンパない。やはりこの曲がアルバムの中で1番好きだ。
その名のとおりカリンバをフィーチャーした「Kalimba Song」は、何だか初期のアースみたいな雰囲気もある小品。時折ファルセットっぽく声を裏返しながら歌うバラード「Take Me Back To Then」、ラストの「Down For The First Time」はマイアミらしい湿度とリゾート感が漂う、サンセット・ムードのAOR/フュージョン・ナンバー。