cane and able
Cane And Able
 Epic '72 

1972年に2枚のアルバムを残している8人組のバンド、ケイン・アンド・エイブル。
カナダ出身のバンドながら、2枚のアルバムはいずれもパリ録音と思われ、仏エピックからのリリース。プロデューサーもクロード・デルクルーというフランス人ジャズ・ドラマーが務めている。
ちょうど同じような時期に、やはりアメリカからフランスへと渡ってアルバム制作したバンドとしてボビー・ボイド・コングレスがいるが、コングレス同様に(いやそれ以上に)このケイン・アンド・エイブルは、初期スライやファンカデリックからの影響下にあるサイケデリック/ブラック・ロック色の濃いファンクをやっていて、彼らのようなカテゴライズしにくいバンドは当時の北米市場ではなかなか受け入れられなかっただろうことは想像に難くない。

ケイン・アンド・エイブルの1stアルバムとなる本作のオープニング・ナンバー「Girl You Move Me」は、何とも禍々しく怪しげなムードが朦々と立ちこめるサイケデリック・ファンク・ロックで、歪みまくったファズ・ギターに熱く噴き上がるホーン・セクション、土着的なアフロ・パーカッションが混然一体となって押し寄せる。
「Starchild」は混沌としつつもクールに覚醒したサイケデリック・グルーヴ。クール&ザ・ギャング「Who's Gonna Take The Weight」のカバーは、本家の演奏のタイトさファンキーさには及ばないが、このゴツゴツした荒削りな演奏もなかなか魅力的。

B面はウィルソン・ピケットのカバーが3曲続く。
「Don't Knock My Love」のカバーは、例のベースラインがより太く重く地を這いずる、重量級のファンク・グルーヴのウネりが超強力。グシャグシャのサイケデリック・ギターに土臭いパーカッションと分厚いホーンで熱く盛り上がるファンク・ロック・ナンバーで、幾度か切り込んでくる弩ファンキーなワウ・ギターもカッコいい。
やや軽めの「Green Grass」は最もソウル寄りの曲。「Toe Hold」は比較的オーソドックスなファンク・チューンだが、グルーヴィーにドライヴする演奏は文句なくカッコいい。ラストの「Found A Child」はラテンも仄かに臭うグルーヴィーなファンク・ロックで、曲中盤からの展開がスリリング。