blue funk
Blue Funk / Heavy D & The Boyz
 MCA '92 


自分の世代的には、ヘヴィーDと言えばダンス甲子園アンセム「Now That We Found Love」。自分がニュージャック不感症になってしまったのは、あの番組で飽きるほどあの曲を聞かされたせいだ。
「Now That We Found Love」は聴く気にもならないが、その曲を収録した91年の3rdアルバム『Peaceful Journey』から、ヘヴィーD&ザ・ボーイズとしては最終作となる94年の5thアルバム『Nuttin' But Love』までの3枚は、ピート・ロック・プロデュース曲が数曲づつ含まれているのでスルーは禁物だ。

ピート・ロックとヘヴィーDは従兄弟同士。ピートはそのキャリアのごく初期、89年のヘヴィーDの2ndアルバム『Big Tyme』の数曲でプロデューサー見習いとしてプロの制作の現場を経験するなど、まだ駆け出しの頃に3歳上の従兄で先に業界でキャリアを築いていたヘヴィーDに随分と後押しをしてもらったようだ。

本作『Blue Funk』は92年の4thアルバムで、ヘヴィーDのアルバムとしては1番好きだ。
まず、本作にはニュージャック・ナンバーは皆無。そして、ピート・ロックとDJプレミアという、当時頭角を現してきたトラックメイカー2人が参加していることが最大のトピックだろう。

まずはピート・ロック・プロデュースの3曲。ちょうど『Mecca And The Soul Brother』をリリースした頃で、完全に自身の作風を確立したピートの手腕が光る。スカル・スナップスの同名曲のドラムにジミー・マクグリフ「Fat Cakes」をサンプリングした「It's A New Day」、ボハノン「Singing A Song For My Mother」使いのソウルフルな「Love Sexy」、そしてルー・ドナルドソン「Pot Belly」やJB「Funky President(People It's Bad)」をサンプリングしたアルバム・タイトル曲「Blue Funk」。特徴的な煙たいホーン・サンプルや黒くガヤる合いの手などに象徴される、あの頃の黄金のピート・ロック・サウンドを堪能することができる。

DJプレミアも負けていない。ヘヴィーD自身が客演したピート・ロック&C.L.スムース「The Basement」をサンプリングしたマッシヴなファンク・トラック「Here Comes The Heavster」、アレサ・フランクリン「Young, Gifted And Black」のピアノ・ループが印象的な「Yes Y'all」の2曲をプロデュース。こちらもギャング・スター『Daily Operation』をリリースした頃で、この後にプレミアのプロデュース・ワークは急増していくことになる。

その他では、バッド・ボーイ所属のジェシー・ウェストのプロデュース曲もイイ。ラファイエット・アフロ・ロック・バンド「Darkest Light」のスモーキーに燻るホーンをサンプリングした「Slow Down」、キング・フロイド「Groove Me」ネタのファンキーな「Silky」、「A Buncha Niggas」はバスタ・ライムス、グールー、ビギー、ロブOらによるポッセ・カット。

ジェシー・ウェストの曲にしても、同じくバッド・ボーイのトニー・ドファットがプロデュースした「Who's The Man」や「Who's In The House」などにしてもそうだが、ア・トライブ・コールド・クエスト『The Low End Theory』やピート・ロック以降に東海岸の主流となった、ジャジーなネタ使いの渋めのトラックがアルバムの中核を為している。JB「Popcorn With A Feeling」をインタールド的に曲間に挟み込んだアルバム構成もピート・ロックっぽいと言えるかも。