bootsy
The Power Of The One / Bootsy Collins
 Sweetwater Studios '20 

前作『World Wide Funk』から約3年ぶりとなるブーツィー・コリンズのニュー・アルバム『The Power Of The One』。
本国アメリカでは昨年10月にリリースされたようだが、スウィートウォーター・スタジオなる聞き慣れないマイナー・レーベルからのリリースであり、また2011年の『Tha Funk Capital Of The World』まではしっかり日本盤も出ていたものの、前作から日本盤のリリースが無くなってしまい、本作もフィジカルでの入手が困難な状況だったが、年明け早々にようやくCDを手に入れることができた。

今回もビッグネームから無名のミュージシャンまで多くのゲスト・プレイヤーを招きつつも、大半の演奏をブーツィー自身が手掛けたプロデューサーズ・アルバム的な作品になっているが、Pファンク人脈からの参加が減り(クリントンは不参加)、ジャズ方面からの参加が増えている印象。
それにしても、齢69歳にして現役感バリバリ、ギラギラのファンク・サウンドが充満の高い完成度を誇る素晴らしい作品。前作、前々作ももちろん最高だったのだけれど、個人的にはここ20年ほどのブーツィーの作品としては、2006年の『Christmas is 4 Ever』以来の大傑作だと思う。

アルバムの短いイントロダクションながら、いきなりクソカッコいい「Funk Formula 1」に続いて登場するアルバム・タイトル曲「The Power Of The One」は、超強力なヘヴィー・ファンクをバックにジョージ・ベンソンが鯔背なギターをキメる。
ブーツィーと同い年の盲目のシンガー/作曲家/マルチ演奏家、エリス・ホールをフィーチャーした「Slide Eazy」も、分厚いリズム・トラックに噴き上がるホーン・セクション、荒くれギターが唸りを上げる破壊力抜群のファンク・ボム。「Creepin'」は、のた打つようなビートの上に、若手ブルース・ギタリストのクリストン "キングフィッシュ" イングラムがファンカデリカルなギターを垂れ流すヘヴィー・スロー・ファンク。

バック・コーラスが「(Not Just)Knee Deep」調のP印哀愁フレーズをなぞる「Jam On」はスヌープ・ドッグのラップがちょっとだけ聴ける。エリカ・バドゥ風の女性ヴォーカルがクールにキメる「Lips Turn Blue」は、分厚いファンク・トラックにスパニッシュ・ギターがメランコリックな情緒を添える。
ウォーキング・テンポでヘヴィーにグルーヴする正調Pファンクの「Funkship Area-51」、比較的ポップな曲調の「Bewise」はモノネオンのベース、ドラムスは故ジョン・ブラックウェル。

ハリウッド・アンダーソンなる人物がギターとヴォーカル(女性シンガーかと思いきや、ネット検索したらイカつい男でビックリ)を聴かせるR&Bナンバー「Soul Not 4 Sale」、ビクター・ウッテンがベース、ブランフォード・マルサリスがサックスで参加した「Club Funkateers」はキャッチーでダンサブルなファンキー・チューン。
スライの大名曲「If You Want Me To Stay」のカバーとなる「WantMe2Stay」でベースを弾くのはラリー・グラハム! ギタリストとして故ゲイリー・シャイダーがクレジットされているミッド・ファンク「Funktropolis」、ブーツィーはドラム・プログラミングのみで、生ドラム含め他のほとんどの楽器をエリス・ホールが演奏する(作曲はブーツィー、エリスにマイケル・センベロの)「Wishing Well」は、エリスのヴォーカルも味わい深い哀愁R&Bミドル。

作曲者及びヴォーカルの1人としてフランキー ”キャッシュ” ワディーがクレジットされている「Bootsy Off Broadway」は、しかしドラムスはキャッシュではなくバーナード・パーディー、クリスチャン・マクブライドのアップライト・ベースが踊り、ブランフォード・マルサリスがブロウするスウィンギーなジャズ・ファンク。
スティーヴ・ジョーダンがドラム、ブライアン・カルバートソンがピアノにホーン、ヴィクター・ウッテンがベース・ソロを弾きエリス・ホールがヴォーカルを取る穏やかなミディアム・ナンバーの「Stargate」は、バック・ヴォーカルに90年代にデビューした懐かしの男性ヴォーカル・グループ、アズ・イエットのクレジットも。ラストの「Stolen Dreams」は寂寥感漂うギターが流離うようなムードの哀愁曲。