gettin over the hump
Gettin' Over The Hump / Simtec & Wylie
 Mister Chand '71 

ともに60年代からシカゴをベースに活動をしていたウォルター "シムテック" シモンズとワイリー・ディクソンの2人がデュオを組んで、1971年にリリースした唯一のアルバム『Gettin' Over The Hump』。

シカゴの巨人、ジーン・チャンドラーが主催するレーベル、ミスター・チャンドからのリリースで、プロデュースはチャンドラーとシムテックが共同で務める他、リチャード・エヴァンスとトム・トムがほぼ半数ずつアレンジを手がけるなど、シカゴの要人たちがバックアップをしている。
演奏は、The T-Boxes Band とクレジットされているが、これはサウスサイド・ムーヴメントのレヴューにも書いたとおり、T-Boxes Bandとはサウスサイド・ムーヴメントの前身か、もしくはそのメンバーを含むバンドであると思われる。またアルバムのほとんどの曲で、シムテック&シモンズとともに、サウスサイド・ムーヴメントのベーシストであるロナルド・シモンズとギターのボビー・ポインターが作曲者としてクレジットされている。

ジーン・チャンドラーの本名はユージン・ディクソン、つまりワイリーと同姓であり、シムテックとロナルド・シモンズも同姓。おそらくこの2組はそれぞれ兄弟かもしくは血縁関係にあると思われるが、そのあたりを考えるとこの新進ソウル・デュオのデビュー作ながらシカゴ人脈の手厚いバックアップを受けていることも納得できる。
もちろんこの2人、シンガーとしての実力も申し分なく、さながらファンキーなサム&デイヴといった趣き。演奏もサウスサイド・ムーヴメントの1stアルバム『The South Side Movement』にも通じるような泥臭いファンキー・ソウルでカッコいい。

「Bootleggin'」はパーカッションが効いた土臭くゴツゴツしたグルーヴにハードなファンク・ギター、2人のソウルフルなヴォーカルも最高なファンク・ナンバー。ピート・ロック&C.L.スムース「Straighten It Out」のイントロダクションでサンプリングされた曲途中のパーカッション・ブレイクを挟み、最後はカオスな演奏と熱い歌で大いに盛り上がる。
「Gotta Get Over The Hump」は泥臭くウネるファンク・チューンで、サウスサイド・ムーヴメントが2ndアルバム『Movin'』にてインストで再演している。「Sold On You」や「Put Up Or Shut Up」はまさにサム&デイヴ・スタイルの張り切りファンキー・ソウルで、痛快ストレートなソウル歌唱がカッコいい。「What's Good To You」もファンキーなアップ・ナンバーで燃える。

本作中唯一のカバーとなる「Maggie May」はロッド・スチュアートの曲で、グルーヴィーでアーシーなサザン・ソウル調のファンキー・ミドル。シカゴ・テイストも薫るグルーヴィー・ソウル「You Just Can't Win」は、曲後半はインストのみでファンキーに熱く盛り上がる。
これも熱いファンキー・ソウルの「Everybody's Got A Part To Play」、ラストの「Is It Meant To Be?」はゆったりとしたリズムで揺れるミディアム・ソウル。