69cents
69 Cents / Ebony Rhythm Funk Campaign
  P-Vine '21 

1969年にシングル「Soul Heart Transplant」1枚のみリリースしたインディアナポリスの5人組ファンク・バンド、エボニー・リズム・バンド。
その後メンバーを拡充し8人編成となり、バンド名もエボニー・リズム・ファンク・キャンペーンに改め、73年にはクルセイダーズのウェイン・ヘンダーソンのプロデュースのもと1stアルバム『Ebony Rhythm Funk Campaign』をリリース。更に76にシカゴのシャイ・サウンド・レコーズからカール・デイヴィスのプロデュースで2ndアルバム『Watchin' You, Watchin' Me』をリリースしている。

今回取り上げる、2021年にPヴァインからリリースされた本作『69 Cents』は、1stと2ndの間、74~75年に録音されるもお蔵入りとなっていた未発表音源。
まず気になるのが、ジャケットに9人写っていること。この前後の1stと2ndのジャケットには8人写っており、本作では1人増えていることになるが、実際にはこの間にメンバーが入れ替わっており、本作の時点ではエボニー・リズム・バンド時代からのメンバーはギター、ベース、ドラムスの3人のみ、2ndアルバムになるとギターとドラムスも抜けオリジナル・メンバーはベースのみになってしまう。

バンドの音楽性も、初期のサイケデリックなガレージ・ファンクから年を経るごとに洗練されていくが、その変遷の過程にある本作は、まだ泥臭さをギリギリ僅かに残しつつも、メロウにコーティングされた上質なファンク/ソウル・サウンドを楽しむことができる。

アルバムの冒頭を飾る「I'm In A Hurry」は粗削りながらもスリリングな演奏が聴けるカッコいいファンクで、本作中では最もイナたさが残る曲。温もり溢れるグルーヴィー・ソウルの「Where You Lead」や、メロウ&スウィートなスロウ・ナンバー「That Is Why」は、2ndアルバムの作風に近づいている。「Shell Of A Man」は円やかなミディアム・ソウルで途中のスウィンギーな展開もシャレてる。

2ndアルバムに収録される「69 ¢」の初期バージョンとなる「69 Cents」は、後の「69 ¢」の洗練を増したディスコ・ファンク・サウンドと比べると、まだだいぶラフな勢いに溢れたファンク・チューン。
「Love So Strange」も洗練されたメロウ・ソウルでなかなかの気持ち良さ。ミスティックなムードのインタールドに導かれるラストの「See The Light」は、曲の中盤からファンク度を増したグルーヴがウネる。