nard
'Nard / Bernard Wright
 Arista GRP '81 

先日訃報が伝えられたキーボード奏者、バーナード・ライト。
10代前半からプロのミュージシャンとして活動し、1981年に自身初のリーダー作となる本作『'Nard』をリリースした時点でまだ弱冠18歳だったのだから、相当早熟な才能だと言える。
本作ではデイヴ・グルーシンとラリー・ローゼンというベテラン・プロデューサーに制作を一任し、バーナードはキーボードとヴォーカル、そして約半数の曲で作曲とアレンジに腕を揮っている。参加ミュージシャンで目を引くのは、やはりマーカス・ミラーだ。生涯を通じて活動を共にする盟友であり、本作でも半数以上の曲でベースをプレイしている。

アルバムの印象としては、アーバンでブギーなファンク、ジャズ・ファンク作品といった感じで、翌82年に同じくGRPからグルーシン/ローゼンのプロデュースでリーダー作をリリースした鍵盤奏者、ドン・ブラックマンのアルバム『Don Blackman』にも近い内容と言えるように思う(ブラックマンは本作にも1曲だけ参加している)。

アルバムの最初の2曲「Master Rocker」と「Firebolt Hustle」は、タイトなグルーヴの都会的なインスト・ジャズ・ファンクで、これはなかなかのカッコよさ。前者ではウェルドン・アーヴィンが共作者に名を連ねている。
スヌープ・ドギー・ドッグ「Gz And Hustlas」でサンプリングされたことでも知られる「Haboglabotribin'」は、にデニス・チェンバースのパワフルなドラムにマーカス・ミラーのベースがソリッドなグルーヴを生むファンク・チューン。バーナードとともにドン・ブラックマンが鍵盤とアレンジでクレジットされており、ラップ風のヴォーカルもブラックマンだ。先にスヌープを聴いた自分には、この曲はもうほとんど「Gz And Hustlas」にしか聴こえないのだが、間違いなく本作のベスト・トラックだと思う。「Spinnin'」もグリグリとトグロ巻くようなマーカスのベースがグルーヴしまくるファンク・ナンバー。

「Just Chillin' Out」はバーナードの小気味良いクラヴィネットが刻まれるブギー・ファンク。「Bread Sandwiches」はフュージョン・タッチのアーバン・ジャズ・ファンク。
「Music Is The Key」 はウェルドン・アーヴィン『Sinbad』に収録されていた曲のカバーで、ルーサー・ヴァンドロスとパティ・オースティンのバック・ヴォーカルを従えてバーナードが歌うスロウ・ナンバー。
アッパーでややハードなジャズ・ファンクの「We're Just The Band」、ラストはマイルス・デイヴィスの1954年の名曲「Solar」をカバー。