perfect angel
Perfect Angel / Minnie Riperton
 Epic '74 

ロータリー・コネクションのヴォーカルとして60年代末から活動し、70年にはアルバム『Come To My Garden』でソロ・デビューを飾ったミニー・リパートン。
ロータリー・コネクション解散後は、同グループ及び1stソロ・アルバムでもプロデューサーを務めたチャールズ・ステップニーの縁で、テリー・キャリアー『Occasional Rain』にバック・ヴォーカルで参加する程度で、おそらくこの頃は彼女のキャリアの中でもやや不遇を託っていた時期のように思える。

しかし、そんな折にスティーヴィー・ワンダーと邂逅、これがミニーのキャリアを大きく開かせることになる。元妻シリータにも似たタイプのミニーのエンジェル・ヴォイスにスティーヴィーは当然のように惚れ込み、彼女を自身のバック・バンドであるワンダーラヴに加入させ、更にはスティーヴィー完全監修のもとミニーのソロ・アルバムを制作。それが彼女の2ndアルバムであり、実質的な再デビュー作とも言える本作『Perfect Angel』。

アルバム全9曲中7曲はミニーとロータリー・コネクション時代の同僚であり夫のリチャード・ルドルフとの共作。演奏陣はオリー・E・ブラウンやレジー・マクブライド、マーロ・ヘンダーソンといったワンダーラヴの面々やマイケル・センベロも名を連ねる。またエンジニアとしてマルコム・セシルとロバート・マーゴレフも参加と、スティーヴィー人脈が挙って脇を固めている。

スティーヴィー自身はと言うと、その名がはっきりとクレジットされているのは、「Take A Little Trip」「Perfect Angel」の2曲の作曲者としてのみ。しかし、エレピやドラムス、ハーモニカのクレジットがあるEl Toro Negroなる人物はスティーヴィーその人であり、本作のプロデューサーとしてクレジットされているScorbu Productionsも、スティーヴィーとミニー&ルドルフ夫妻の共同名義。またアレンジはワンダーラヴ名義になっているが、これも当然バンドと共にスティーヴィーが大きく関わっていると見るのが自然だろう。

個人的には、スティーヴィーの手を離れ、レオン・ウェアやラリー・カールトン、ジョー・サンプルらと作り上げた次作『Adventures In Paradise』も捨て難いのだが、ミニーの代名詞とも言える永遠の名曲「Lovin' You」を収録する本作は、紛うことなき彼女の代表作であり、これもまた名盤だと思う。

いきなり力まかせに叩きつけるドラムスがいかにもスティーヴィーな、土臭くグルーヴィーな「Reasons」からアルバムはスタート。「It's So Nice (To See Old Friends)」は乾いたアコギに心絆されるカントリー・ソウル・バラードで、ミニーの美しくも切ない歌声が琴線に触れる。
スティーヴィー作の「Take A Little Trip」は、もうまんま当時のスティーヴィーの手癖全開のメロディーとサウンドのメロウ・グルーヴで、コレは堪らん気持ちよさ。「Seeing You This Way」はパーカッションも効いたラテン・タッチのグルーヴィー・ソウルで、この辺りも当時のスティーヴィーの嗜好が現れている。「The Edge Of A Dream」はスティーヴィーのピアノをバックに柔らかく歌う微睡みのメロウ・ソウル。

スティーヴィー作のアルバム・タイトル曲「Perfect Angel」もまたスティーヴィー印のメロウ・グルーヴで、ミニーのキュートでもあり艶っぽくもあるヴォーカルも相まって、トロけんばかりの極楽ソウル。「Every Time He Comes Around」はエモーショナルなギターがロックっぽいバラードで、1曲目と並んで本作中で最もアーシーなナンバー。
「Lovin' You」に関しては、最早何も言うことはないでしょう。これよりも好きな曲は他にいくつもあるけれど、ミニーの歌い手としての魅力が最大限に表現されている曲であるのは間違いない。そして、「Lovin' You」からそのまま繋がる感じで始まるラストの「Our Lives」。スティーヴィーのハーモニカ、そしてボコボコ叩かれるパーカッションがやはり土臭さを醸すバラード。